eこの地で伝統守り抜く

  • 2018.05.02
  • 生活/生活情報
[画像]メインイメージ

公明新聞:2018年5月2日(水)付



震災後に避難 大堀相馬焼の工房再び
福島・浪江町→いわき市



300年以上の歴史を持つ伝統工芸の工房が"堂々再建"――。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴い、福島県浪江町から避難を強いられた大堀相馬焼の「陶吉郎窯」が4月30日、同県いわき市で再出発した。オープン初日には、福島復興への願いを乗せ、多くの人が集まった。


職人魂で故郷の登り窯


かつての美術館を改修したモダンな空間に、白や青、漆黒の力作がズラリと並ぶ。その数、約500点。「とても鮮やか」「このコップなら娘が気に入るはず」。ひっきりなしに訪れる来場者は、作品にじっと見入り、手を伸ばしていく。

マグカップやお皿を買い求めた横山雄保さんは「先祖代々守ってきた土地を震災で失いながらも、前向きに挑戦する姿が励みになる」と笑みを浮かべた。

「これは新しい登り窯で焼き上げたもの」と窯元の近藤学さん(64)と息子の賢さん(37)。新作を紹介する様子にも、喜びがにじむ。「震災から7年、やっとスタートラインに立てました」

3.11の後、産地の浪江町大堀地区は、放射線量が最も高い区域になった。いまだ先行きは見通せない。二十数軒を数えた窯元も散り散りに。「伝統産業にとって土地を離れることは致命傷」(学さん)といわれる中、いわき市に仮工房を構え、作陶を再開させた。

ただ、本格的な活動を模索するうち陶吉郎窯の伝統で、自然な色合いが表現できる登り窯を再び求めるように。二人は土地の選定や資金繰りに奔走し、故郷の工房に負けないほどの機能の施設を市内に整備した。

敷地内には登り窯をはじめ四つの窯や、作品が鑑賞できるギャラリーを完備させた。将来的には、陶芸教室を開く構想も膨らませている。


公明と官民合同チームが尽力 「とても心強かった」


この日まで近藤さん親子を陰で支えたのは、公明党の安部泰男県議だった。「新天地での本格再開を後押ししたい」と二人のもとに足しげく通い、補助金の申請などを助言。浜田昌良復興副大臣(公明党)とも連携し、何度も相談に乗った。

高木陽介前経済産業副大臣(同)が強いリーダーシップで立ち上げた、被災事業者を支援する「福島相双復興官民合同チーム」も力を尽くした。近藤さん親子が震災後初の「父子展」を開催する際、インターネットを通じた資金調達を提案。情報拡散やチラシ作成も手伝い、目標額を大きく突破。イベント成功や全国へのファン拡大につなげた。

「ここまでこられたのは、公明党と官民合同チームのおかげ。とても心強く、いつも安心感があった」と学さんは目を細めて振り返り、言葉を続ける。

「この地で大堀相馬焼の看板を背負い、伝統を守っていく」。こう学さんが職人魂をみなぎらせると、賢さんも「今までの経験にとらわれず、登り窯でしかできない作品にチャレンジしたい」とキッパリ。

新たな伝統を築きゆく二人の歩みは、始まったばかりだ。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ