e「文化芸術立国」へ着々と

  • 2017.10.30
  • エンターテイメント/情報
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公明新聞:2017年10月29日(日)付



アートを介した地域づくり



基本法の制定、改正


観光、教育など施策の裾野広げる


新潟県の南端、十日町市と津南町からなる越後妻有地域。里山が残り、棚田が広がる同地域に、廃校を利用した美術館やアート作品が随所に見られます。

十日町市在住の樋口道子さんは、この地で観光客などの案内役を務めるボランティアの一人。「9月は台湾から3500人もこの地を訪れ、地元産の農作物を使った料理などを堪能されました」と満足げです。

同地域で、2000年から3年に1回、本祭と位置付けて開催されているのが、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。国内外の芸術家による作品制作や展示、地域住民との交流などを行ってきました。前回(15年)は、50日間の会期中、35カ国・地域から363組のアーティストが参加。延べ約51万人が訪れ、県内の経済波及効果は約51億円に上りました。

大地の芸術祭の開催年以外の年も、田植えや収穫祭、冬の運動会など季節ごとに多彩なプログラムを実施。運営に携わるNPO法人越後妻有里山協働機構の藪田尚久事務局長は「アートを媒体とした取り組みを継続して、地域の魅力を発信してきました。過疎化が進む地元でも伝統行事が復活するなど、地域づくりの機運が高まりつつあります」と期待を寄せています。

こうした文化芸術を通じた地域づくりを全国各地に広げようと、文化芸術振興の根拠法となる「文化芸術振興基本法」(01年成立)が今年6月、公明党の推進で改正されました。

法律名を「文化芸術基本法」に改め、文化芸術の振興にとどまらず、観光やまちづくり、国際交流、福祉、教育など関連分野の施策を進めていくことを明記。文化芸術の範囲に食文化なども新たに加えています。


個別法も相次ぎ誕生


美術品補償や劇場活性化で誰もが親しめる機会を創出


文化芸術振興基本法の制定以降、多くの人が文化芸術に触れられる機会を作るため、個別法も相次いで誕生しています【別掲参照】。

例えば、2005年に成立した「文字・活字文化振興法」には、図書館の適切な配置や司書の充実など読書環境の整備を進め、10月27日を「文字・活字文化の日」とすることが盛り込まれました。制定以降、学校現場では「朝の読書」運動が広がり、小・中・高等学校の実施率の全国平均は50%台(05年)で推移していたのに対し、今月23日現在の実施率は76%まで大幅に上昇しています。

11年には、海外から借りた美術品が破損した時などに、政府が一部補償する「美術品損害補償法」が成立。保険料減額など展覧会主催者の負担が軽減され、これまで貸し出されなかった美術品が借りられるようになった上、入場料の軽減や、子ども向けの無料鑑賞会を実施するなど、一級の美術品を多くの人が鑑賞できる機会が増えています。

これまでに、補償制度が適用された展覧会は28件に上り、現在、国立西洋美術館(東京都)で開かれている「北斎とジャポニスム」や、豊田市美術館(愛知県)の「ジャコメッティ展」にも適用されています。

一方、劇場や音楽ホールの活性化をめざす「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」(劇場法)は12年に成立しました。同法は、実演芸術の振興や制作者、実演家ら人材の養成に関する施策の策定・実施を国と自治体の役割と規定。良質な実演芸術を鑑賞できる機会が増えると注目されています。


子どもが"本物"に触れる


公明党は、子どもたちが本物の文化芸術に触れる機会の創出を積極的に推進してきました。

例えば、文化庁の「文化芸術による子供の育成事業」は、全国の小・中学校の体育館や文化施設などで一流の文化芸術団体による巡回公演や、学校に芸術家を派遣する鑑賞・実技指導を実施。子どもたちは日ごろ触れられない体験を通して芸術を身近に感じています。

巡回公演と派遣の合計実施件数は2016年度で4526件で、比較可能な02年度の約7倍に拡大。現在検討が進められている18年度予算案の概算要求では、17年度より予算額を増額し、年間5200回以上の開催をめざしています。

また、民俗芸能や邦楽、日本舞踊、華道、茶道などを親子で体験できる「伝統文化親子教室事業」も現在、約3000教室以上で実施され、好評を博しています。


公明党が中心役担いリード
前文化庁長官、山梨県立美術館館長 青柳 正規氏


2001年に成立した文化芸術振興基本法は、国が文化芸術立国に向けて本気で取り組む"決意表明"であり、その理念をしっかりと明記してくれました。

私たち文化芸術に携わる人間はもとより、国民全体にとっても大変に有意義な法律といえます。法整備に中心的な役割を果たしてくれた公明党には、心より感謝を申し上げます。

さらに、今年6月の基本法の改正では、文化芸術が関わる領域をさらに広げるなど、今後の方向性が具体的に示されました。この点を高く評価しています。

基本法から派生した個別法の制定についても、公明党には力を尽くしてもらいました。その一つが、美術品損害補償法です。これは、関係団体が長年求めていた法整備にもかかわらず、財政支出を渋る財務省が強く反対していました。

この状況に対し、公明党が核となり、他党を巻き込む形で実現してくれたのです。公明党は、やると決めたら必ず約束を守ってくれる政党です。本当に頼りになると感じています。

今後、人口減少が進む日本にあって、国の活力や国民の生活満足度を維持するカギとなるのは文化の力です。その意味で、これからは地域に根差した身近な伝統や文化の振興も重要になるでしょう。

公明党は地方議員も熱心に活動されています。地域の実情に合った文化芸術政策の提言を期待しています。

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