e認知症 徘徊対策 市が保険契約

  • 2017.10.26
  • 情勢/解説
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公明新聞:2017年10月26日(木)付



全国初 最大3億円を賠償
民間事業者を選定、11月から
神奈川・大和市



全国で推計500万人以上とされる認知症の高齢者。本人と支える家族の安心につながる取り組みが求められる中、神奈川県大和市は、認知症高齢者が徘徊中に事故に遭い、家族が高額の損害賠償を請求されて苦しむ事態を回避しようと、公費で保険料を全額負担する制度を導入し、注目を集めている。9月26日の市議会で、1年分の保険料として約323万円を計上した補正予算が成立。市によると、全国初の試み。


市内に8駅、踏切32カ所


事故への備え 家族に安心


対象は、大和市や関係機関がつくる「はいかい高齢者等SOSネットワーク」の登録者で、約240人。被保険者として契約し、登録者が事故でけがや死亡した際に保険金が支払われ、物を壊したり、相手にけがを負わせた場合などの損害賠償にも対応している。支払われる賠償金は最大3億円。市は、契約する保険業者を選定し、11月から制度をスタートする方針だ。

認知症の高齢者の事故を巡っては2007年、愛知県大府市で、当時91歳の男性が東海道本線の電車にはねられて死亡。列車に遅れが生じたとして、男性の家族がJR東海から約720万円の損害賠償を求められる訴訟があった。一審、二審とも家族に賠償を命じたが、最高裁は昨年3月、このケースでは家族の賠償責任を認めないとの判断を示し、JR東海の請求を棄却していた。

この事故の経緯に着目し、徘徊対策として保険導入を発案した大木哲市長は、面積27.09平方キロメートルの市内に小田急江ノ島線、相模鉄道本線、東急田園都市線の計8駅と、32カ所の踏切がある実情を踏まえ、「市民が踏切事故に巻き込まれる可能性が高く、認知症の方を支える家族の不安な気持ちに立った時、リスクを少しでも市がカバーすべきと考えた」と指摘する。

市の人口は23万5190人(10月1日現在)。市内の認知症患者数が約8600人に上り、今後の増加も予測されることから、市は昨年9月、「認知症1万人時代に備えるまち」を宣言。GPS端末を靴に収納して、徘徊する高齢者の位置情報をパソコンやスマホなどで確認できる事業を実施するなど、認知症の人や家族が安心して暮らせる街づくりに積極的に取り組んでいる。

大木市長は「誰でも関わる可能性がある認知症の問題は、人ごとではない。現場を知っている基礎自治体はきめ細かな対応が求められるので、市職員と力を合わせて今後も施策を展開していきたい」と話していた。


公明が後押し


公明党市議団(吉澤弘団長)はこれまで、認知症の予防を促すため、65歳以上の市民を対象に特別養護老人ホームなどでのボランティア活動にポイントを付与する介護予防ポイント事業や、健康イベントなどに参加すると付与される「ヤマトン健康ポイント」を推進。

また、認知症サポーター養成講座や高齢者の居場所づくりなどに尽力し、お年寄りを地域で見守る体制の整備に取り組んできた。保険制度を盛り込んだ今年度補正予算の成立も後押しした。

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