e豪雨時(水害)(土砂災害)の逃げ遅れゼロへ

  • 2017.10.26
  • 情勢/気象
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公明新聞:2017年10月26日(木)付



グループホーム「ひだまり」
岩手・久慈市



近年、短時間のうちに大量の雨が降り、大規模な自然災害を引き起こす事態が後を絶たない。このため国は、災害時に自力での避難が難しい高齢者や障がい者らの「要配慮者」が利用する施設に対し、水害や土砂災害からの避難計画作成を義務付けるなど、逃げ遅れをなくす対策に全力を注いでいる。国のモデル事業により、避難計画を作った岩手県久慈市のグループホーム「ひだまり」の取り組みを紹介する。


行政と連携し避難計画


行動手順を明確化 地域とも協力体制築く


「行政側と確認しながら作らないと、役立つ避難計画にはならないと痛感した」。ひだまりの管理者、村田美幸さんは振り返る。

ひだまりは平屋建てで入所者が9人。中小河川の久慈川に隣接し、氾濫時には1、2メートル未満の浸水が想定されている。避難計画策定の先行事例を全国に発信する国のモデル施設に選定され、今年8月に国や地元自治体、有識者らの協力を得て、新たな計画を作った。

元々、豪雨時の避難計画は作っていた。しかし、昨年8月30日に、台風10号による河川の氾濫に備え計画に沿って避難した際は、「想定とは違うことばかり起き本当に困った」という。

当時、事前に発令されていた避難準備情報に気付かなかった上、屋外にある防災無線は風雨で聞こえなかった。また、計画に避難行動の目安を定めていなかったことから判断がつかず、知人の知らせで決断。計画で想定していた避難場所についても、地域住民からの情報を基に変更した。

ようやく入所者と車で移動を始めたものの、各地で道路は通行止めとなっており、普段は使わない道路へ。水没していたが、突っ切り何とか難を逃れた。「危機管理ができていなかった」と村田さんは自戒する。

この経験から、村田さんが新たな計画作りで重視したのは(1)避難開始の判断基準と避難経路の決定(2)日頃からお世話になっている施設の運営推進会議の民生委員や町内会長に相談する―ことだった。

行政担当者との検討では、「避難路は複数想定する」「浸水時は排水作業で通行止めになる道路がある」ことなどを初めて知った。そして、担当者らとの意見交換を踏まえ、自ら災害情報を得ることや、川の氾濫注意情報で避難準備を始めること、入所者の避難所への移動手順などを決めた。

今では、施設職員の危機意識も格段に向上。先月17、18日に接近した台風18号では、担当職員が頻繁に災害情報を確認。利用者には私服で寝てもらい、いつでも避難できる体制を整えた。

村田さんは「今後も避難訓練を重ねて実効性を高めていきたい。施設の状況に合った計画にするには、地域や行政との連携が特に重要です」と強調した。


高齢者施設 法改正で作成義務化


政府、マニュアルなどを公開し、後押し


避難計画の作成手順政府は、先の国会で成立した改正水防法と改正土砂災害防止法により、浸水想定区域や土砂災害警戒区域内に立地し、市町村の地域防災計画に定められている要配慮者利用施設に対し、避難計画の作成と訓練実施を今年6月から義務付けた。

この背景には、岩手県岩泉町の高齢者施設で入所者9人が犠牲になった昨年8月の台風10号による悲劇がある。国土交通省によると、法改正前の今年3月末時点で、浸水想定区域の対象施設3万6751のうち、計画作成率は8.4%にとどまっていた。

避難計画作成に当たっては、実効性のある内容が求められるが、各施設の立地状況、職員数や利用者数によって避難対応がそれぞれ異なることから、内閣府がモデル事業を通じて計画作りを後押ししている。岩手、岡山両県の2施設の事例をホームページで公開したほか、国交省がマニュアルとして「計画作成の手引き別冊」で手順を示すなど、計画作りを促している。

政府は、義務化によって2021年度までに全ての対象施設が計画作成を完了する目標を掲げている。


公明も強力に推進


公明党は、洪水などに備えた警戒・避難体制の強化を一貫してリード。今回の法の改正においても、避難計画の作成義務化など党の主張が随所に反映されている。

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