eコラム「北斗七星」

  • 2017.10.26
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年10月26日(木)付



「御不浄」。祖父母が健在だったころ聞いた記憶がある、トイレの別称だ。広辞苑では「はばかり」と説明されている。死語ではないらしい◆本来、「丁寧、敬いの言葉にするための接頭語」(倉本美津留編著『超国語辞典』朝日出版社)の御を「汚れていること」に付けた表現。ぷっと笑えるが、今は形も変わり、「クールジャパン」(かっこいい日本)の一つとなっている。訪日外国人も驚く温水洗浄便座だ◆普及率は、日本の家庭に限ると80%超。高率とはいえ、普及までには相当の苦労があった。温水洗浄便座は、米とスイスで生まれた医療・福祉機器。53年前、日本の衛生陶器メーカーが輸入。国産化し販売したものの、さっぱりだったという◆最大の壁は定着していた和式の文化。下水道の未整備も課題だった。メーカー側は便座が設置された公共施設の地図に加え、使った人の感動体験を載せた冊子まで作り配った。販売への執念が「トイレに関する社会の文化を『誰もが使いやすい』に変え、定着させた」(星川安之氏寄稿/日経)のだ◆ベトナムではウォシュレットのほか、少量の水で渦を巻くように流すトルネード洗浄など高度な技術に関心が集中。アジアでの営業利益は2.3倍に膨らんだ。新たな需要を生み出す弛まぬ努力。万般に通じる、「壁を破る原理」だろう。(田)

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