e公立学校の避難所機能 断水に備えたトイレの確保を
- 2017.09.04
- 情勢/解説
公明新聞:2017年9月2日(土)付
地域の避難拠点となる学校の防災力強化を進めたい。
災害時の避難所に指定されている公立小中高校などの、防災機能に関する調査結果を文部科学省が公表した。厳しい現状が浮き彫りになっており、早急に手だてを講じる必要がある。
例えば、施設利用計画を策定済みの学校の割合が4割に満たないことだ。
施設利用計画は、「運営本部をどこに設置するか」「感染症患者の専用スペースはどうするか」など、避難所としての運用方法を定めるもの。被災者を円滑に受け入れ、学校施設を効果的に利用する上で重要である。それが4割に満たないとは。緊急時の混乱に拍車を掛けることがないよう、早急な計画策定を求めたい。
さらに見過ごせない点が、断水時でも利用できるトイレの確保だ。言うまでもなく、排せつへの備えは、水や食料の備蓄とともに避難所に求められる最大の役割である。
調査によれば、非常用物資の備蓄は72%の学校で終えているのに対し、携帯トイレや雨水を使用するタイプなど断水時用のトイレを備えている学校の割合は49.5%にとどまった。中には1割に満たない県もあり、放置できない実態と言わざるを得ない。
過去の災害では断水で避難所のトイレが機能せず衛生面で問題となったり、トイレを心配して水分を控え、エコノミークラス症候群や脳梗塞につながった例が相次いだ。
こうした事態を防ぐために有効なのが、マンホールの上に簡易トイレを組み立てて使用するマンホールトイレだ。下水管につながるため水道が止まっても利用できる。実際、熊本地震では水洗トイレが使用できない中、マンホールトイレが役立った。
こうした災害対応型トイレの導入費については、一部を補助する国の制度がある。設置方法などを解説したガイドラインもある。国は制度の活用や情報の周知に一層努めるべきだ。
公立学校の耐震化は、ほぼ完了している。次の課題は、避難所として求められる機能を十分に確保することであろう。東日本大震災をはじめ多くの大規模災害で得られた教訓を無駄にしてはならない。