e宇宙ビジネス 民間が活躍できる環境整備を

  • 2017.08.08
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年8月8日(火)付



宇宙ビジネスの発展へ、国内の環境整備を急ぎたい。

テレビのBS放送、天気予報、カーナビ......。私たちの生活に欠かせない、これらのサービスは、ロケットによって宇宙に運ばれた人工衛星からの電波を受信することで成り立っている。

さらに近年、小型の人工衛星をビジネスに生かす動きが欧米を中心に盛んだ。各国の石油タンクの衛星写真を解析し世界の石油備蓄量を推計して投資家に情報提供したり、個人の遺灰を運んで「宇宙葬」を行うなどの新しいサービスも次々に生まれている。

このように、人工衛星の打ち上げに使われるロケットの需要は高まるばかりだ。世界の宇宙ビジネスの市場規模は、2015年時点で約22兆円に上る。その成長をけん引しているのが低コストの小型ロケットである。

既に欧米では有力な宇宙ベンチャー企業が育っているのに対し、日本は遅れが目立つ。7月30日には、北海道で国内初となる民間企業による小型ロケットの打ち上げが行われたが、宇宙空間への到達には失敗した。

政府は、国内総生産(GDP)600兆円に向け生産性向上の一環として、宇宙市場の規模を現在の1兆2000億円から30年代には倍増させるとしている。そのためには、民間の活力が不可欠だ。柔軟な発想とスピード感ある意思決定ができる国内ベンチャー企業をどう育てるか。

課題の一つは、リスクを恐れてベンチャー企業に資金が集まりにくいことだ。ロケット開発にかかる費用は莫大で、しかも必ず成功するとは限らない。ここは、政府系金融機関による支援の拡充を検討できないか。

ロケットの打ち上げ施設の整備も必要だ。国内には、常設の射場が2カ所しかなく、本格的な民間小型ロケットに対応した施設はない。打ち上げの実績を積み重ねるためにも、射場の整備が求められよう。

公明党などの推進で昨年に成立した宇宙活動法によって、打ち上げ事業は許可制となり、民間企業が宇宙ビジネスに参入しやすくなった。

この歩みを止めず、民間の取り組みの"発射台"としての役割を国に期待したい。

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