eエシカル消費 買い物から未来を変えられる

  • 2017.04.26
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年4月26日(水)付



「日々の買い物が世界の未来を変えていく」との認識を社会全体で共有したい。

消費者庁の研究会が「エシカル消費」の普及に向けた報告書を公表した。国民の意識向上や推進体制の整備を呼び掛けている。

エシカル消費とは、人間や社会、環境などに配慮した消費行動のことだ。身近なところでは、障がい者が作った品物やエコ・リサイクル製品などを積極的に購入することがこれに当たる。

国際的な課題への取り組みという視点も見逃せない。

輸入品のコットンを例に挙げれば、途上国の多くのコットン畑では大量散布される農薬で労働者に深刻な健康被害が出ているという。児童労働の問題も横たわる。農薬による河川や土壌の汚染も進む。

こうした問題を消費者が意識し、多少高価であっても農薬を使わないオーガニックコットンを購入するようになれば、生産地の人道問題や環境問題の前進につながることが期待できる。「倫理的な」「道徳的な」という意味の英語「エシカル」が使われていることは、こうした点からも理解できるのではないか。

エシカル消費の広がりは、国際社会に環境問題や貧困対策などへの取り組みを求める国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも寄与しよう。消費者庁が普及に取り組む意義は大きい。

ただ、エシカル消費についての国民の理解は進んでいない。実際、消費者庁の調査では、「エシカル消費」という用語の認知度は6%にとどまる。今後、国内にどう普及させていくかが大きな課題だ。

折しも、東京五輪・パラリンピックでは「持続可能性に配慮した調達」に関する原則が採用される。学校などでエシカル消費を「持続可能な開発のための教育」(ESD)や消費者教育に位置付けて学習してはどうだろうか。行政や企業が協力して、その重要性を広くアピールするなどの啓発活動も求められよう。

原材料の調達方法や製造・販売過程などが環境・社会の持続可能性に配慮されていることを「見える化」する必要もある。「エシカル商品」の分かりやすい認証のあり方も含め、検討を進めるべきであろう。

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