e「家庭血圧」で脳卒中防ぐ

  • 2016.12.16
  • 生活/生活情報

公明新聞:2016年12月16日(金)付



事業30周年イベント開催
発症が15年で3分の1に(旧大迫町)
生活習慣の改善に効果
岩手・花巻市



血圧を家庭で測って健康を守ろう――。岩手県旧大迫町(現・花巻市)で1987年、家庭で血圧を測る「大迫家庭血圧測定事業」がスタートして今年で30年。このほど市内で記念行事が開催された。同町では、住民の生活習慣の改善により、脳卒中による死亡率が大幅に減少。「家庭血圧」に着目した町の取り組みは効果を上げ、"大迫モデル"として注目されている。

「大迫家庭血圧測定事業30周年記念フェスティバル」(日本高血圧協会主催)には、市民や医療関係者ら約300人が集まった。会場では、血圧測定や塩分診断のコーナーなどで健康意識を高め合ったほか、旧大迫町の取り組みとその成果を振り返った。

一般に高血圧は自覚症状がない上、長期にわたると命に危険を及ぼす可能性も高まる。以前の同町は、全国的にも脳卒中や寝たきりの高齢者が多く、減塩や運動不足の解消など生活習慣の改善が課題となっていた。

そこで当時、同町内の県立大迫病院の院長だった永井謙一医師が、東北大学大学院で高血圧に関する研究を行っていた今井潤教授に相談。「家庭で血圧を測れば健康意識が高まり、脳卒中の予防につながる」との今井教授の提案から、「大迫家庭血圧測定事業」がスタートした。

同事業により、「家庭血圧」で血圧値が「135/85㎜Hg」を超えると脳卒中になりやすい傾向が判明。この血圧値は、日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」のほか、世界保健機関(WHO)にも採用されている。また、「家庭血圧」が病院での受診時よりも高血圧に伴う病気の発症リスクを予測するのに優れていることも分かった。


公明が血圧計貸し出し推進

記念行事には、公明党の藤井幸介、菅原ゆかりの両市議も参加。今井教授と同事業の30年の足跡を通して意見を交わした。

席上、今井教授は「大迫研究の成果が高齢化の進む過疎地域での医療に貢献できれば」と期待。藤井市議は「市民の健康増進を図るため、『家庭血圧』の啓発に努めていきたい」と語っていた。

同市では、昨年1月から市内の各団体を対象に自動血圧計の貸し出しを実施(1団体につき1台)。今年度は23団体が利用し、市民から「血圧を見て自己管理ができる」と好評で、血圧計を購入する利用者が増えている。

藤井市議が2014年12月の定例会で、市内全域に家庭血圧を普及させるための対策を求めていた。

「今朝の血圧は上が131、下が78」。小野京子さん(80)の日課は、朝晩に血圧を測ること。血圧が高いときは、塩分を控え目にした食事をとるように心掛けている。毎日のジョギングを欠かさないという佐々木伸一郎さん(63)も「1日の走る距離は血圧を見て決めている」と話していた。

「家庭血圧」の周知により、旧大迫町では男性の脳卒中発症率(10万人当たり)が、1995年の320人から、2010年には約3分の1となる120人まで減少した。市健康づくり課成人保健係の久保田和子係長は、「血圧で体の異変にいち早く気付くことが生活習慣の改善や早期治療につながっている」と評価していた。

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