e過酷な環境が大幅改善

  • 2016.09.28
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年9月28日(水)付



廃炉作業の安全優先
食堂新設「冷たい食事一変」
東電福島第1原発構内は今



東京電力福島第1原発事故から5年半以上が経つ。原発構内では日々、約6000人の作業員が力を合わせ、廃炉に向けてひたむきに働き続けている。公明党は、作業員の健康に留意し、過酷な作業環境の改善を政府や東電に求めてきた。原発構内を訪ね、作業環境がどう改善されたかを探った。(東日本大震災取材班)


線量が低減 敷地の9割 防護服不要


14日午前8時。原発事故対応の拠点「Jヴィレッジ」を出発して約40分、東電福島第1原発正門付近の入退域管理棟に到着した。同棟は、作業員が構内入退時に防護服の着脱や被ばく線量の管理などを行う場所。ここから作業員は引き締まった表情でバスに乗り込み、持ち場に向かっていく。

構内で視察用バスから目に付くのは、防じんマスクをして一般作業服で行き来する作業員の姿。構内の空間放射線量がいかに低減されたかが分かる。管理棟から500メートルほど進んだエリアでのバス内の線量は毎時1マイクロシーベルトで、帰還困難区域内の国道6号で計測した2.8マイクロシーベルトを下回った。バスは汚染水タンクが立ち並ぶエリアを通過後、原子炉建屋から直線距離約80メートルの高台に停車。ここでも作業員が軽装備で仕事をしていた。

正午。構内にある大型休憩所の食堂は、列をつくり配膳を待つ作業員らでにぎわっていた。「定食は売り切れか。ひれかつカレーのご飯大盛りだな」。320席あるテーブルで思い思いに談笑しながら食事する様子は、普通の社内食堂と変わらない。

「入退域管理棟と大型休憩所ができたことで、環境は劇的に変わった」。事故発生当初から作業に携わる大成建設株式会社東北支店の竹内良平工事長は振り返る。管理棟が運用開始する2013年6月までは、遠く離れたJヴィレッジでの防護服や全面マスクの着脱が必須で、作業前後の移動も重装備のままだった。その負担が激減した。

一方、食堂を含む大型休憩所は昨年5月に完成。それ以降、原発から約9キロ離れた大熊町の「福島給食センター」で調理された温かい食事が日替わりで提供されている。休憩や打ち合わせスペース、シャワールームも完備され、今年3月にはコンビニもオープン。県内出身の作業員は「冷えたおにぎりや弁当を食べていた当時からは、想像できないほど改善した」と語る。

構内の作業環境を改善するため、空間放射線量を低減させたり、雨水の地下浸透を防ぐ対策としては、樹木の大半を伐採し、のり面などをモルタルで被覆する「フェーシング」が効果てきめんだった。線量は大幅に下がり、全面マスクの不要エリアを順次拡大。今年3月8日以降は、敷地面積の9割のエリアで防護服が不要となった。

一連の対策で「高線量エリア以外は一般の現場とほぼ同等の環境になってきた」(竹内工事長)という。構内各地の空間放射線量が確認できる大型ディスプレーの設置も、作業員の安心につながった。

30~40年を要する廃炉は、高線量下の作業や溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)取り出しなどの困難が伴う。それでも、放射線の不安に向き合い、誇りを持って従事する多くの作業員がいる。福島再生へ汗を流す勇姿に襟を正す思いで、無事故の作業進ちょくを願った。

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