e熊本地震5カ月 仮設住民が支え合い

  • 2016.09.14
  • 生活/生活情報
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公明新聞:2016年9月14日(水)付



進み出した自治会の発足
コミュニティー構築で孤立防ぐ
熊本市



熊本地震から5カ月。仮設住宅の建設と入居が急ピッチで進む今、生活再建の先行きが見えず、仮設に引きこもってしまう被災者も少なくない。こうした中、住民らで孤立しがちな高齢者を見守り、互いに支え合う自治会発足の動きが広がりつつある。熊本市内で自治会を立ち上げた塚原仮設住宅(南区城南町)の取り組みを追った。=熊本地震取材班

「久しぶり! 体調はどぎゃんですか?」―。日没迫る11日夕刻。塚原仮設住宅(96戸)の集会所に、住民が親しげにあいさつを交わしながら集まってきた。


20人ほどの住民が座席に着いた午後7時すぎ、同住宅で自治会長を務める清田純一さん(60)が全員に呼び掛けた。

「今回の自治会の討議内容は『敷地内の駐車スペースのルール決め』です」。


清田会長が説明する傍ら、副会長の松本政広さん(41)と会計の川上真由美さん(57)が、一人一人に「困ったことはない?」「仕事は順調?」などと、ひと声掛けながら資料を手渡していく。それに笑顔や手振りで応える出席者たち。集会場には家族のような温かな雰囲気が漂っていた。

塚原仮設住宅は、熊本市内に完成した合計8カ所の仮設住宅のうち、いち早く自治会を発足させた。

「東日本大震災を教訓に高齢者の孤独死を防ぎ、住民同士で支え合うコミュニティーの構築をめざした」と語るのは、自治会発足を後押しした城南まちづくり交流室の髙濱辰也室長だ。同室長の提案で会長職を引き受けた清田さんが、副会長と会計の人選を行い「住民のために」と、心一つに取り組みを開始した。

日ごろの"声かけ運動"の中で、「買い物が不便」との声を聞けば、地元スーパーや生協などの移動販売を誘致。集会所の清掃など、共同生活ゆえのルール作りも行った。

さらに、住民交流イベントも活発に開催。8月は清田会長が自ら講師となって地域の歴史を学び合った。「今後はボランティアの協力も得ながら、もっと笑顔を広げたい」と清田会長は意気込みを語る。

この日の集会では、高齢者や妊婦がいる世帯から「自宅近くに駐車できれば助かる」との要望もあり、話し合いは継続していくことに。参加した50代男性は「こうして顔を合わせられる場があることがありがたい」と話す一方、70代女性は「外出や交流を拒む人もいる」と指摘する。

10、11両日には、南区城南町の他の仮設住宅2カ所でも自治会が発足。市は社会福祉協議会に委託し、生活支援相談員の常駐も始めた。今、熊本の仮設では、住民同士による助け合いが始まっている。


今なお500人が避難所生活


熊本県内の被災地では今もなお、9市町村で避難所13カ所に502人の被災者が身を寄せ、不安な生活を余儀なくされている(13日現在)。

仮設住宅は、建設に着手している16市町村4266戸のうち、8割超の3576戸が完成し、順次、入居が進んでいる(12日現在)。その一方で、公的支援を受けるのに必要となる罹災証明書の1次調査の受付件数17万6200件のうち、4万5428件の被災者が2次調査を依頼するなど、4割近くが1次調査の判定結果を不服としている実態もある(6日現在)。

こうした中、自宅を建て直すことができない高齢者などの被災者は、仮設の入居期限(2年)が切れた後の生活再建の見通しが立たず、希望を失い、自宅に引きこもってしまう事例も現れ始めている。被災者に寄り添った支援が急がれる。

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