e引きこもり54万人 きめ細かな訪問支援の普及を

  • 2016.09.14
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年9月14日(水)付



特効薬はないものの、何とか自立できる道を開きたい。

15~39歳の引きこもりの人が、全国で推計54万1000人に上ることが内閣府の調査で判明した。2010年の前回調査に比べ約15万人減ったが、依然50万人超の高水準だ。引きこもりの人とその家族を支え、社会復帰を後押しする取り組みが求められている。

今回の調査で注目すべきは、引きこもりの「長期化・高年齢化」が顕著になったことだ。

引きこもり期間については、「7年以上」が34.7%と最も多く、「1~3年」が最多だった前回より長期化の傾向にある。引きこもりになった年齢は20~24歳が34.7%と最も多かったものの、35~39歳が10.2%と倍増している。

引きこもりは、長期化するほど解決が難しくなるとされる。本人が引きこもり生活に慣れてしまうからだ。また、引きこもりの子どもが高年齢化するに従って親も高齢になると、子どもと向き合う気力・体力がどうしても衰えてしまう。その上、親が亡くなった後の子どもの生活維持も大きな課題である。

引きこもりに対する取り組みは、初期段階における対策をはじめ、長期化・高年齢化といった最近の傾向も考慮しなければならない。

こうした中で期待したいのが、「外に出たくない」という人に対してアウトリーチ(訪問支援)を行う「ひきこもりサポーター」だ。引きこもりへの支援は時間と労力がかかるとされる中、同サポーターは継続的に訪問して本人と家族を支えていく。引きこもり本人との距離感を尊重して手紙を使って効果を挙げた事例もある。厚生労働省は同サポーター派遣事業を進めており、実施自治体も増えている。こうしたきめ細かな支援は、本人や家族にとって心強いものであろう。一層の普及が望まれる。

相談体制の整備も急ぎたい。引きこもりに的確に対応するためには専門家の協力が欠かせないからだ。相談窓口となる「ひきこもり地域支援センター」は現在、各都道府県・政令市68カ所に開設されている。今後、一般市町村への設置も進めてはどうか。

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