e障がい者の意思疎通幅広く

  • 2014.11.19
  • 情勢/社会

公明新聞:2014年11月19日(水)付



手話、点字、音読、要約筆記など
来年3月に条例制定へ
検討委設置し 市と当事者で議論重ねる



兵庫・明石市


兵庫県明石市は現在、手話や点字といった障がい者のコミュニケーション手段を促進する条例の来年3月制定に向け、検討委員会を立ち上げて議論を重ねている。手話に限らず、障がい者の意思疎通の手段を包括的に推し進める条例は全国的にも珍しいという。最終的に市は、障がい者の差別を解消する条例の制定も視野に入れており、障がい者施策を大きく前進させるのが狙いだ。

昨年10月に鳥取県が手話を言語と定める「手話言語条例」を全国で初めて制定。また、障がい者福祉施策を総合的にリードする指針として障害者差別解消条例の制定も千葉県や京都府をはじめ、全国の自治体に広がっている。

こうした中、明石市も差別解消条例の制定に乗り出した自治体の一つで、今回の障がい者のコミュニケーション手段の促進をめざす条例は、具体的施策の"第1弾"。手話に限らず点字、音読、要約筆記、ひらがな表記といった障がい者の意思疎通手段を幅広くカバーしているのが特徴で、市の担当者も「全国的にも珍しい」という。条例は(1)前文(2)総論(3)手話言語(4)コミュニケーション手段の促進―の4項目で構成される見通しだ。

市によると、今年3月末現在、市内に住む視覚障がい者は826人、聴覚・平衡機能障がい者は1007人、音声・言語機能障がい者は168人となっている。このほか、知的障がい者は2190人という。

市は、こうした市内に住む当事者らを加えた検討委員会を今年8月に設置。これまで3回、同委員会の会合が開かれ、障がい者から日常生活におけるコミュニケーション手段の重要性のほか、手話通訳、点訳、音訳、要約筆記者を担う人材育成の必要性が述べられてきた。

具体的には、視覚障がいに関しては「公的な書類においても点字署名が認められていない場合が多い」「点字が読めない中途失明者にとって、音声による情報提供は重要である」といった声や、聴覚障がいに関わる要約筆記については「会話だけでなく、会場の雰囲気や聴衆の反応なども書き表す必要があり、要約筆記者の養成が大切」などの意見が出されてきた。また、ひらがななどの表記に関連して、「知的障がいのある人の中には、文字による表現が理解しにくく、表記の工夫にとどまらず、デザインパネルなど、視覚的支援も必要」との指摘もなされてきた。

今週21日に開催される最後の検討委員会で作成される条例案は、パブリックコメントを実施した後、来年3月の市議会定例会に提案される予定。また、市は同時期から差別解消条例の制定に向けた議論も開始する方針だ。




市議会公明党が推進


障がい者のコミュニケーション手段の促進については、公明党の国出拓志市議が6月の市議会定例会の一般質問で条例の制定を求めたのに対し、泉房穂市長らが今年度内の制定を視野に取り組む考えを示していた。



"通訳"担う人材の育成、視覚的支援の必要性などの意見集約



「聞こえない」実情知ろう


明石ろうあ協会事務局次長

家根谷 敦子さん

阪神・淡路大震災の発生時、市内のアパートに住んでいたが、停電で「見えない」「聞こえない」状態となり避難ができなかった。また、当時は手話通訳の制度もなかったため、伝えたいことも伝えられなかった。

聴覚障がい者は、見た目だけでは気付いてもらえないのが実情だ。車のクラクションや電車事故の情報なども入ってこない。

こうした苦労を一人でも多くの人に知ってもらうため、条例の制定を強く望んでいる。



"心つなぐ手段"と痛感


明石手話通訳者協会代表
井口 朋子さん


結婚を機に手話を学び始めた。毎年、新しい手話が生まれてくるのを思うと、「手話は言語」であると強く感じる。

聴覚障がいの方と共に高校を訪れた時、手話が分からなくても積極的に交流しようとする生徒がいた。話を聞くと、小学生のころに一度だけ聴覚障がい者と触れ合う機会があったという。「若い時の出会いが自信に変わる」と、その生徒の姿を通じて学んだ。手話は"心をつなぐ手段"にもなると思う。画期的な条例になることを期待している。

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