e石綿被害国の責任認定

  • 2014.10.10
  • 情勢/社会

公明新聞:2014年10月10日(金)付



江田氏らが厚労相に要望一日も早い全面解決を
最高裁、泉南訴訟で初判断



大阪府・泉南地域にあったアスベスト(石綿)関連工場の元労働者や遺族ら計89人が、国の規制が不十分だったため肺がんなどになったとして損害賠償を求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は9日、国の責任を認める初判断を示した。裁判官5人全員一致の意見。

その上で、原告のうち二審で訴えが認められた54人に関し、国の上告を棄却。総額約3億3000万円の賠償を命じた判決が確定した。二審敗訴の28人については、敗訴判決を破棄した上で損害額算定のため大阪高裁に審理を差し戻した。一方で、国の責任を否定した時期もあり、その期間に就労していた7人は敗訴が確定した。

原告側は、1971年まで排気装置の設置を義務付けなかったのは違法と主張。70年代以降、石綿粉じん濃度の規制が強化されなかった点や、労働者に防じんマスクを使用させることを事業者に義務付けなかった点も違法と訴えた。

第1小法廷は判決で、労働省(当時)が都道府県の労働基準局に出した58年の通達で、粉じん作業について労働環境の改善を指示していた点を考慮。同年の時点で、排気装置の設置義務付けに必要な技術的知見もあったとして、「義務付けなかったことは違法となる余地がある」と指摘した。

一方、粉じん濃度の規制強化に関し、「国が行っていた規制は当時の専門的知見に基づいており、合理性を欠くとは言えない」と判断し、原告側の主張を退けた。

防じんマスクについては、国が47年の時点で事業者に呼吸用保護具の備え付け義務を課し、労働者にも使用を義務付けていた点に言及。「労働者による使用を事業者に義務付けなかったことが合理性を欠くとまでは言えない」と結論付けた。

泉南アスベスト国家賠償請求訴訟の最高裁判決を受け、公明党アスベスト(石綿)対策本部の江田康幸本部長、中野洋昌事務局長(ともに衆院議員)は9日夕、自民党アスベスト問題プロジェクトチームの佐田玄一郎座長(同)らと共に、厚生労働省で塩崎恭久厚労相に対し、一日も早い全面解決を求める要望書を手渡した。

要望書では、原告ら被害者について、「家族のため、生活のために働き、わが国の経済発展を支えてきた人たち」と指摘。また、2006年の提訴以来、原告のうち14人が亡くなっていることに触れ、「早期解決の願いは切実である」と強調した。さらに、「国の過去の不作為が違法と判断された意味は極めて重大だ。今こそ被害者の方に耳を傾けることこそ重要」と訴え、国に全面解決への決断を求めている。

塩崎厚労相は「要望を重く受け止める」と述べた。

江田氏は要望後、「提訴から8年がたち、原告ら被害者の高齢化が進んでいる」と指摘した上で、「国は時間をかけずに全面解決を決断し、原告になっていない被害者の救済も進めてもらいたい」と述べた。

これまで公明党は、同訴訟の原告団や弁護団と意見交換を重ね、政府に対し、「被害者救済を最優先にすべきだ」と、速やかな解決を求めてきた。

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