e安全重視の厳格な審査を

  • 2013.07.10
  • 情勢/社会

公明新聞:2013年7月10日(水)付

再稼働は国民、住民の理解が必要
原発新規制基準が施行

 

 

原子力規制委員会が策定した原発の新規制基準が8日に施行され、北海道、関西、四国、九州の電力4社が5原発10基について、再稼働の前提となる安全審査を申請した。

東京電力福島第1原発事故では、想定を上回る地震と津波で全電源が喪失し、メルトダウン(炉心溶融)が起きた。原因が究明されないまま、多くの人々が今も不安を抱え避難生活を送っている。この教訓を踏まえ、新基準は安全対策を大幅に強化している。

規制委は、高い独立性と専門性を持つ。その専門的かつ科学的な知見に基づいた新基準は、従来の安全規制を抜本的に見直すものだ。

具体例を挙げれば、原発ごとに想定される最大規模の津波を「基準津波」として、防潮堤などの整備を要求。活断層も最大で過去40万年前までさかのぼって評価を求めるなど、自然災害への想定を厳格化した。

過酷事故対策も初めて義務付けたほか、既存の原発にも最新の安全対策を義務付ける「バックフィット制度」を導入した。「世界一と言っていいぐらい厳しい基準」と田中俊一原子力規制委員長が自負する内容だ。

安全対策に費用がかさんだり、長期間の運転停止に追い込まれる原発が出てくる可能性もあるが、安全を最優先する上で当然の措置である。

安全審査には、1原発当たり少なくとも半年程度はかかるとみられる。規制委には、申請された原発が新基準に適合するかどうか、厳しく判断してもらいたい。

新基準では、事故時に前線基地の役割を担う「緊急時対策所」の設置が義務付けられている。しかし、申請のあった5原発のうち、4原発で整備が終了しておらず、当面は代替施設でしのぐ考えだ。大丈夫だろうか。

新しい規制基準は、あくまでも最低ラインにすぎない。基準を満たしたとしても、危険性が全くなくなるわけではない。電力事業者には、徹底して安全を確保する取り組みを求めたい。

仮に、新基準を満たした原発であっても再稼働に向けては、国民や立地住民の理解を得られるか、一つ一つ慎重に判断して結論を出していかなければならない。

東京電力は柏崎刈羽原発6、7号機の安全審査を申請する方針を示していたが、新潟県知事と物別れに終わり、見送った。電力事業者は再稼働を急ぐのではなく、地元の不安や懸念に真摯に向き合い、丁寧に理解を求める姿勢を貫いてもらいたい。

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