eコラム「北斗七星」

  • 2018.07.23
  • 情勢/社会
2018年7月21日


「軸なき時代」に入ったのか。将棋界八大タイトルの一つ、棋聖の五番勝負第5局で羽生善治棋聖が豊島将之八段に敗れ、2冠から竜王1冠に後退。ついに複数のタイトル保持者がいなくなった。31年ぶりという◆それにしても若手の台頭には驚かされる。破竹の勢いの藤井聡太七段は16歳。今回、羽生の棋聖11連覇、タイトル獲得通算100期の前人未到の記録を阻んだ豊島は28歳だ。タイトル保持者は豊島を含め20代3人と30代3人。羽生ら2人は40代である◆数年前、羽生がプロ棋士をめざす若手について語った言葉がある。「将棋界に、前衛的なモダンアートが台頭してきたような感じ。定型の中でやるのではなく、違うことも試してみようかといった潮流だ」と。自著『直感力』(PHP新書)で知った◆羽生自身、いち早く導入したデータベースで膨大な対局記録を分析。変幻自在の指し手を生み出した。ところが、今の若手は従来の型からは考えつかない手を打つAI(人工知能)の将棋ソフトで修練。ベテランに、研究の質で対抗している◆前衛的といえば、映画『ピカソ この天才を見よ』で、ピカソはガラス板に牛を写実的に描き、それを消して半具象、抽象画と描き進め、最後に全く違う立体的な牛に変えた。混迷から創造へと向かうには? 人への投資拡大で革新力を育みたい。(田)

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