eコラム「北斗七星」

  • 2018.06.27
  • 情勢/社会
2018年6月27日


大阪府北部を襲った地震の直後、ネット上でデマ情報が流された。現地で「シマウマが脱走」とか、「京阪電車が脱線」など。「在日外国人の窃盗・強盗に注意を」といった外国人への偏見をあおるような投稿も見られた。災害時の誤った情報は、人命に関わる場合もある。大阪府は「信頼できる情報か確認を」と呼び掛けている◆デマと聞くと、1994年のきょう起きた「松本サリン事件」を思い出す。長野県松本市の住宅地で、猛毒のサリンを散布し多くの死傷者が出たオウム真理教信者の犯行だが、事件直後は、第一通報者の河野義行さんが犯人視され、そのデマ情報がマスコミによって拡散された◆自身も家族もサリンの被害に遭った河野さんは以前、講演会で語っていた。多くの記者から「オウムが憎くないか」と聞かれるたびに、「あなたは加害者意識が薄い」と返し、マスコミによって「犯人」と印象付けられたことのほうが「よっぽどつらかった」と訴えてきたと◆先日、デマ情報から市民を守る戦いを長年続けるジャーナリストと懇談したとき、彼は「確かな根拠がない情報を流したり、ウソで市民を陥れる行為は許せない」と語気を強めていた◆情報を発信する側の責任は重いと戒めたい。また受ける側も、世にあふれる情報を正しく見極める力が求められている。(三)

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