e途上国の水銀汚染

  • 2018.05.07
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年5月4日(金)付



国連が初の調査。実態解明を急げ



水銀による隠れた健康被害の実態が解明されることを望みたい。

国連環境計画(UNEP)が、わが国の環境省の支援を受け、7月から途上国における水銀汚染の影響を初めて現地調査する。

昨年8月、水銀による環境汚染や健康被害を国際的に防止する「水俣条約」が発効した。今回の調査は、世界規模で対策を強化するための第一歩の取り組みとして、大きな意義がある。

途上国での水銀汚染はかねてから指摘されていた。とりわけ、大気中に排出される水銀の半分が、アジアの途上国から発生していることが強く懸念されている。

主な排出源は金属加工業者だ。加工作業の工程で使われた水銀が気化して大気中に放出される。有害な煙が立ち上る地域には貧困層が多く住む。また、経済発展による都市部での人口集中に廃棄物処理が追いつかず、水銀を含む電池や蛍光灯などが大量に野焼きされる光景が当たり前になっている。

水銀は中毒性が高く、高濃度で体内に取り込むと神経疾患を引き起こす。水俣病の悲劇を繰り返さないためにも、国際的な水銀規制は喫緊の課題である。

UNEPによる調査は、インドネシアなどの廃棄物場で実施され、住民の毛髪などを採取して水銀濃度を分析する。調査結果の一部は、11月にスイスで開かれる水俣条約締約国会議で報告される。汚染の実態を国際社会が改めて認識し、対策を前に進める契機としなければならない。

強調しておきたいのは、日本の役割である。

例えば、水俣病の教訓を分かりやすく発信することが求められよう。途上国で水銀規制が進まない理由の一つに、危険性への理解が乏しいことが挙げられているからだ。

日本の環境省は既に、各国語による水銀対策の紹介を行っている。今後は、学校で使える教材の作成など、取り組みを一層強化してはどうか。

産業廃棄物の処理技術をはじめ日本が貢献できる分野は多い。水俣条約は2020年までに一定量以上の水銀を使った製品の製造・輸出入の原則禁止を掲げている。その実現を日本がリードしたい。

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