e子どもの震災体験後世に

  • 2018.05.07
  • 生活/生活情報

公明新聞:2018年5月4日(金)付



副読本「つなぐ~熊本の明日へ~」作成
作文や学級通信など収録
道徳や防災の授業で学び合う



熊本県教育委員会は、熊本地震で被災した子どもたちの体験談や教訓などをまとめた副読本「つなぐ~熊本の明日へ~」を作成し、今年度から県内の小中学校で道徳や防災などの授業に活用している。こうした副読本の発刊は全国的にも珍しく、取り組みを訴えてきた県議会公明党の城下広作議員はこのほど、県庁内で宮尾千加子・県教育長らと意見を交わした。

今回、作成された副読本は、小学校低・中・高学年用と中学生用の計4種類(各A4判)。表紙を横に並べて"つなぐ"と一つのイラストになるのが特徴だ。

それぞれに、子どもたちが書いた震災体験の作文や、教師らがまとめた学級通信など856点の中から約20話ずつを収録。計17万冊を発刊し、今年度から県内全ての公立小中学校と特別支援学校小・中等部などに配布している。

県教育庁義務教育課の古田亮審議員によると、2017年5月に80人の教師らによる編集委員会を立ち上げ、計12回にわたって収録内容などを検討してきた。副読本を通して生命の貴さをはじめ、助け合いの精神や家族の大切さなどを学ぶとともに、震災の教訓を語り継ぐことが目的。「子どもたちの心のケアの観点から、恐怖心などを思い出させることがないように言葉や表現を慎重に選んだ」(古田審議員)という。

小学校高学年用に掲載した「父と母の姿から」は、美容師の両親を持つ女子児童が、被災店舗で無料シャンプーを通して被災者を元気づける両親の姿を綴ったもの。感謝の思いがあふれ、涙する人々の姿も記されており、「自分たちも地震にあったばかりなのに、人のことを思いやり、道のない道を行ってでも、だれかの役に立ちたいとがんばっている父と母を本当にすごいなと思いました」と、両親に対する尊敬の心が描かれている。

宮尾教育長は「こうした子どもたちのありのままの心情、言葉を未来へとつないでいきたい」と期待を込める。

副読本の作成については、城下議員が17年2月の県議会定例会で「熊本地震の経験や教訓を後世に伝え残すためにも児童・生徒のための副読本を作るべきだ」と主張。これに対して宮尾教育長は「防災教育の手引きや他者に寄り添う心を育成するための副読本を作成する」と答えていた。

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