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  • 2018.03.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年3月19日(月)付



知的障がい者らへの強制的な不妊手術が問題となっている旧優生保護法に基づく措置と、研究・開発が進む自動運転車の実験環境の整備について解説する。


旧優生保護法


知的障がい者らに強制的に不妊手術を行っていた問題が表面化。被害者の救済へ、与党は議員立法など検討。


Q 最近、旧優生保護法という法律名を、よく耳にするが。

A 同法に基づき、知的障がい者らが過去に不妊手術を強制されていたことが、あらためて問題となっているからだ。1月に宮城県の60代の女性が国に損害賠償を求めて仙台地裁に提訴した。これがきっかけとなり、重大な人権問題としてクローズアップされた。

Q そもそも、どんな法律なのか。

1948年に施行された旧優生保護法は、「不良な子孫の出生防止」を目的に掲げ、知的障がい者や精神疾患の患者らに対し、本人の同意がない場合でも不妊手術を認めていた。同法は96年に母体保護法に改定され、障がい者差別に該当する条文は削除されている。

厚生労働省によると、旧法の下で不妊手術を受けた障がい者らは約2万5000人。このうち約1万6500人は本人の同意なしに施術されたという。ただし、個人名を特定できる資料がほとんど残っておらず、詳しい実態は不明だ。そのため、国連女性差別撤廃委員会や日本弁護士連合会は救済措置を政府に訴えていた。

Q 国の対応は。

A 政府は、「当時としては違法な行為ではなかった」として、被害者の実態調査や救済措置には慎重な姿勢を示している。

だが、公明党は事態の重大さを深刻に受け止め、「本人の意に反して手術が施されたとすれば、人権上、問題だ。政治的に救済のあり方を考える必要がある」(山口那津男代表)との見解を表明。「与党内でも検討し、野党とも連携して、できるだけ早く救済措置を講じたい」(井上義久幹事長)と主張し、今月6日に救済のあり方を検討する超党派の議員連盟が設立された。さらに同13日には、自民、公明の与党両党が、被害者支援の仕組みを検討するワーキングチームの設置を決めている。

Q 救済制度を作ることは可能か。

A 井上幹事長が「議員立法で救済の道を開くことは十分可能」と指摘するように、過去にはハンセン病や薬害C型肝炎などの救済措置が議員立法でなされた。今後の論議に注目が集まっている。


自動運転の実証実験


戦略特区法の改正で規制を緩和・凍結し、実施しやすい環境を整備。2020年のサービス開始をめざす。


Q 自動運転車の研究・開発が進んでいる。

A 本格導入に向けた実験を行いやすくしようと、国家戦略特区法改正案が13日、今国会に提出された。国家戦略特区とは地域限定で規制を緩和・凍結する制度のこと。改正法案の柱は、国家戦略特区内で(1)自動運転(2)ドローン(無人航空機)(3)これらに関連する電波の利用――の先端技術について、実証実験を迅速かつ円滑に実施できるようにすることだ。

Q なぜ法改正が必要なのか。

A 自動運転を例に挙げると、遠隔操作型の自動運転車には、ハンドルやアクセル・ブレーキペダルが装備されていない。こうした車両は現行の保安基準の一部に適合しないものがある。地域の理解や道路の使用許可も必要で、実験にはそうした調整に時間がかかってしまう。

国家戦略特区の秋田県仙北市では、2016年11月に全国初となる公道での無人車両の走行実験が行われたが、実施には煩雑な手続きが必要だった。

このため、改正法案では、国と自治体、事業者の三者が共同で実験計画を作成し、首相の認定を受ければ、「保安基準の一部を適用しない」「道路使用を許可されたものとみなす」といった措置が受けられるようにする。これにより、仙北市のような運転実験も手続きが簡略化される。

Q 自動運転の実用化へ向けた国の計画は。

A 政府は自動運転のレベルについて、操作の一部をシステムが補助する「1」から、人が操作に全く関わらない「完全自動」の「5」まで段階的に分類。15年6月に閣議決定した「日本再興戦略改訂2015」に、「完全自動走行を見据えた環境整備の推進」を明記した。現在、限定された地域や道路での完全自動をめざす「4」の20年のサービス開始をめざし、官民を挙げて取り組んでいる。

また、特区関連の動きとは別に、警察庁は昨年6月、遠隔操作型の自動運転実験に関するガイドライン(指針)を策定。これに基づき、同年12月に東京、愛知、石川の各都県で実験が行われている。法改正は、こうした試みを後押しすることにもつながる。

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