e中小企業の賃上げ ベアは人材の確保にも必要だ

  • 2018.03.06
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年3月6日(火)付



自動車、電機など主要製造業の労働組合で構成する金属労協が、2018年の春闘要求について中間状況をまとめた。基本給の底上げにつながるベースアップ(ベア)の平均要求額が、3812円と昨年の同時期を超えた。

中でも中小労組の動きは活発だ。組合員1000人以上の大手はベア平均要求額が3522円なのに対し、299人以下の中小は平均3900円のアップを求めている。昨年春闘では、中小の賃上げ額が初めて大手を上回った。今年もその流れは続きそうだ。

深刻な人手不足に悩む中小企業の経営者も、人材確保に賃上げは不可欠との意識は強いのではないか。実際、経済産業省が昨年10月に発表した中小企業の賃上げに関する調査によると、賃上げの理由として最も多かったのは「人材の採用・従業員の引き留め」の約49%だった。

今年の就活戦線も「売り手市場」であるため、学生は大企業に目を向けがちだ。若き人材を呼び寄せるため、中小企業が待遇改善に力を入れるのは当然といえよう。

気になるのは、中小企業の体力である。先の調査でも、賃上げの理由として「業績回復・向上」を挙げた中小企業は約34%にとどまっている。大手に比べ経営基盤の弱い中小にとって、人件費を積み増す決断は容易でないはずだ。

中小企業が賃上げしやすい環境をどう整備するか。回復基調にある日本経済の基盤を一層強くする意味からも、この課題に取り組むことを忘れてはなるまい。

賃上げの財源を確保するためには、何より生産性の向上が欠かせない。業務の効率化により、経費の削減と同時に従業員一人当たりの生産性を改善することができれば、企業の収益が増し、賃上げにつなげることができる。

中小企業の生産性向上については、政府も支援策に注力している。

先に成立した2017年度補正予算には、試作品やサービス開発を後押しする「ものづくり補助金」、業務効率化に役立つIT(情報技術)の導入を支援する「IT導入補助金」などが盛り込まれた。

これらの施策が活用されるよう、政府は丁寧に周知に努めてほしい。

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