e所有者不明土地 公共のための利用促進めざせ

  • 2018.03.05
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年3月5日(月)付



防災や復旧・復興のための公共事業は一刻も早く完成させたい。しかし、そのために必要な土地を買収、または収用したくても土地所有者が分からないため探索に何カ月もかかって事業が遅れてしまうという事態が起こっている。この解決は急務である。

そのため政府は、「所有者不明土地」を公共事業など公共目的のために円滑に利用できるようにするための法案を今国会に提出する。これによって公共事業が進み、国土の有効利用が広がることを期待したい。

「所有者不明土地」とは、不動産登記簿などを見ても名義人の死亡により実際の所有者(相続人など)が直ちに判明しない、判明しても連絡がつかない土地のことだ。それが、国土計画協会の研究会の推計によると、九州の土地面積に相当している。

何代も相続登記をしないまま放置された土地の場合、相続人が100人を超える例もあるという。全員の合意を得るためには探索などで多大な時間とコストが必要だ。

そこで、「所有者不明土地」を公共事業のために収用する場合の特例を設け、同時に、所有者探索の手続きを合理化することにする。

今回、円滑利用の対象になるのは「所有者不明土地」のうち、物置とか簡易なものを除き土地の上に建築物がなく、現に利用されていない土地であり、判明している一部の所有者からも反対がない場合に限られる。その条件に合えば、公共事業のために国・自治体が収用による所有権取得をする場合、収用委員会の審理手続きを省略し、同委員会に代わって都道府県知事が裁定できるようにする。

また、現在は所有者探索のために最後は地元の古老への聞き取りまで求められていた調査も、原則として登記簿や住民票など公的書類に基づく調査に限定することで事業の遅延も回避する。

さらに、地域福利増進事業を創設した。街中の「所有者不明土地」を公園や公民館などに利用することが目的で、都道府県知事が上限10年の利用権を設定できる。所有者が現れ明け渡しを求めたら期間終了後に原状回復する。

街の活性化にも利用できる事業として広がってほしい。

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