e3・11大震災7年 風化、風評と闘い抜く

  • 2018.03.05
  • 情勢/解説
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公明新聞:2018年3月4日(日)付



発災7年を前に宮城で「復興フォーラム」
教訓伝え 後世に生かす
山口代表が強調



東日本大震災の発災から11日で7年を迎えるのを前に、公明党宮城県本部(庄子賢一代表=県議)は3日、仙台市で山口那津男代表、井上義久幹事長が出席して「みやぎ復興フォーラム2018」を開催した。会合では、宮城学院女子大学の平川新学長の基調講演や有識者によるパネルディスカッションを実施。党所属の国会議員、地方議員と被災自治体の首長、民間支援団体の関係者などを交えて被災地の現状や課題、支援のあり方を議論するワークショップも行った。

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公明のネットワークで生業再建


あいさつに立った山口代表は、今後の復興加速について、「風化、風評と闘うこと、この二つの目標と抗いながら、われわれは進んでいきたい」と強調し、人間の復興をやり遂げる決意を力説。同日午前に震災遺構として保存されている旧荒浜小学校を視察したことに触れ、後世に震災の教訓を伝え、生かしていくことの重要性を訴えた。

発災から7年間の公明党の取り組みについては、被災自治体に担当の国会議員を置き、地元議員との連携を強化し、「被災地でやるべきこと、困っていることをつぶさに取り上げ、野党時代から政府を動かしてきた」と力説した。

また、これまでの復興の歩みに関して山口代表は、漁港や道路、鉄道などインフラ面で復興は進み、災害復興住宅も計画の9割を超える状況にあると指摘。半面、生業や産業の再建では、地域や産業間で差が生じていると述べ、「こうした点をしっかり見据えて、復興支援に臨みたい」と述べた。


地域のつながり回復を
平川学長


一方、平川学長は「ひとりの力、みんなのチカラ」とのテーマで講演。希薄化した人や地域のつながりを回復するために、行政が果たす役割などについて見解を述べた。

この中で平川学長は、人口減少社会を迎える中、単身の高齢者世帯が増え、さらに町内会などの活動も弱まり、共同性が希薄化していると指摘。

特に、高齢化が深刻な震災復興住宅では地域の共同性を回復させる取り組みが重要だと述べ、行政主導で共同性を回復させるためのアイデアを出し、多様な選択肢を提供すべきだと語った。


福祉、子ども支援が急務
有識者ら今後の課題を議論


パネルディスカッションで意見を交わす近江、菅野、森田、平川の各氏=同基調講演後のパネルディスカッションでは、東日本大震災の今後の課題について、「株式会社MCラボ」の阿部清人代表取締役の進行で、有識者が活発に意見を交わした。

被災した子どもの居場所づくりや心のケアを行っている、東洋大学社会学部の森田明美教授は、震災の負の記憶や避難先での差別・偏見を恐れ、東北出身であることを隠そうとする子どもがいると指摘し、「子どもたちが自信を持って故郷を語れるようにしないといけない」と訴えた。また、震災で親を亡くしたり、避難先で溶け込めずに孤立している子どもたちと福祉施策をつなぐ仕組みが急務だと強調した。

被災者の生活再建支援に取り組んでいる、「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」の菅野拓主任研究員は、日本の災害対策はインフラ整備に偏りがちで、福祉の充実が遅れていると問題提起。震災時に高齢者や障がい者らが排除されないよう、「社会の備えとして、東日本大震災の経験から(災害に備えた福祉施策の改善や法整備の重要性を)発信していくことが大事だ」と述べた。

震災で社屋が被災しながらも手書きの壁新聞を避難所に貼り、被災者に情報提供を続けた石巻日日新聞の近江弘一代表取締役社長は、企業やNPOなどが実施する復興支援の費用対効果を向上させる必要があると指摘。「地域のために何をしようとしているか、ビジョンを整理して統合できる部分は統合すべき」との考えを示した。

このほか、基調講演を行った平川氏もパネリストとして意見を述べた。


津波の脅威 忘れない
仙台市で山口代表ら 遺構の旧荒浜小を視察


震災遺構の旧荒浜小で津波に襲われた廊下や教室を見て回る山口代表ら=3日 仙台市若林区公明党の山口那津男代表と井上義久幹事長は3日、東日本大震災の遺構として一般公開されている仙台市若林区の旧荒浜小学校を視察した。これには党所属の国会議員、地元議員らが同行した。

同市沿岸部にある旧荒浜小は、大津波で4階建て校舎の2階部分まで浸水。屋上などに児童や地域住民320人が避難し、救助された背景がある。

市は震災の教訓を伝えるため、昨年4月に校舎を震災遺構として保存・整備した。

一行は、市まちづくり政策局の松村光担当課長の案内で校舎内を視察。津波が校舎を襲った午後3時55分で止まった時計や、なぎ倒された鉄柵、天井板が外れたままの廊下などを見て回った。

また地震発生から救助されるまでの経過を紹介する映像や震災前の荒浜の街の様子を伝える展示を観賞。松村担当課長は、「津波の恐ろしさを伝えるとともに、荒浜地域に暮らしていた人々の記憶も残していきたい」と語った。

視察を終え、山口代表は「震災の教訓を伝え、災害を防ぎ、乗り越えていくことが大事だ」と話し、遺構を通じて防災への意識を高めていく重要性を強調した。

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