e3・11から7年 続・教訓の行方

  • 2018.02.13
  • 情勢/解説
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公明新聞:2018年2月13日(火)付



震災アーカイブ
あの日の記録、後世に
風化防ぐため収集から利活用へ



間もなく東日本大震災から7年を迎える。あの日の教訓は、どのように深化し、広がりをみせているのか。<続・教訓の行方>と題し、各地の取り組みをシリーズで紹介する。第1回のテーマは「震災アーカイブ(記録保管)」。風化を防ぐため、震災の記録を後世に残し続けようとする活動に迫った。=東日本大震災取材班

キーワードに「津波」と打ち込み、検索する。画面には、震災当時の市街地の様子や津波の脅威を伝える写真、映像などが一覧で表示された。その数、約1万点。宮城県が運用する「東日本大震災アーカイブ宮城」のウェブサイトで公開している膨大な"あの日の記録"だ。

写真や文書などを収集して保存、公開するアーカイブ活動は、震災の風化を防ぐ上で大きな役割を担う。同県は全市町村と連携して、3.11関連の資料を22万点も公開、自治体の防災対策や防災教育などで活用できるようにしている。

アーカイブ事業に取り組む宮城県図書館の太田朋子主査は、「今すぐではなくても、数十年後には役に立つかもしれない。残し続けること、それ自体が重要」と力説する。

1995年の阪神・淡路大震災以降、徐々に機運が高まっていたアーカイブ活動は、東日本大震災を機に本格化し、全国に広がった。主体は自治体はじめ学術機関や企業、NPOなど多岐にわたり、3.11関連の資料をデジタル化の手法で公開している団体だけでも40を超える。

広がりの背景について、震災アーカイブ「みちのく震録伝」を運営する東北大学災害科学国際研究所の柴山明寛准教授は、「デジタル化が進み、写真や映像など情報が取得しやすい環境になった」と指摘。さらに「"過去の災害の教訓を生かせなかった"という強い思いも影響しているのでは」と付け加える。

時間の経過とともに埋もれ、失われてしまう貴重な震災記録をどう残し、後世に伝えていくか――。同研究所では、アーカイブ活動のあり方を巡って、被災地の関係者が討論するシンポジウムを開いている。

「震災から7年を迎え、アーカイブは第2段階に入ってきている」。1月に開かれたシンポジウムで今村文彦・同研究所長はこう呼び掛け、これまでに収集した資料を「どう利活用していくかが今後の最も重要な課題だ」と強調した。そうした問題意識から、多くの官民団体が工夫を凝らしたアーカイブ活動を繰り広げている。

仙台市民らでつくる任意団体「3.11オモイデアーカイブ」もその一つ。「震災の中の生活」を残そうと、市民が携帯電話のカメラで撮影した写真などを集め、活用している。

中でもユニークなのが、同市の文化施設「せんだいメディアテーク」と協働で開いている「3月12日はじまりのごはん」という写真展だ。炊き出しや買い物、食卓の風景など震災時の「ごはん」にまつわる写真を展示し、思い出したことを来場者に自由に書いてもらう。参加型の企画として、神戸、福島、横浜などでも開き、好評を博している。

同団体の佐藤正実代表は、「風化を防ぐためにも、震災に対して市民の"関わりしろ"をつくり、広げていくことが大事だ」と語る。

震災の教訓を10年、100年先の未来に残していけるかどうか。アーカイブ活動の広がりが果たす役割は大きい。

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