e動きだす再犯防止

  • 2018.01.09
  • 情勢/解説
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公明新聞:2018年1月9日(火)付



推進計画の下で、国、地方、民間が連携



刑法犯の検挙人員(捜査機関が逮捕や任意取り調べなどで容疑者とした人)は、近年大幅に減少したものの、そのうち再犯者が占める割合(再犯者率)は一貫して上昇傾向にあり、犯罪者の約半数が再犯者という現状だ。再犯防止対策を進めている政府は昨年12月、再犯防止推進法に基づく再犯防止推進計画(推進計画)を閣議決定した。推進計画の意義と、特に、社会復帰に欠かせない就労と住居の問題をまとめた。


社会での孤立防ぐ


刑事司法の入り口と出口の両方で支援へ


推進計画(計画期間は2018年度から5年)は、再犯防止推進法(議員立法として16年12月に成立・施行)に基づいて策定された。同法は「犯罪をした者等」(非行少年を含む)が社会で孤立することなく、国民の理解と協力を得て社会復帰ができるように支援することを基本理念に掲げた。

しかし、円滑な社会復帰による再犯防止は厳しい状況になっている。

グラフで示した再犯者率と同様、刑務所に入所している受刑者のうち再入者が占める割合も増加傾向にあり、16年の再入者率は59.5%に上った。刑務所は受刑者を更生させるための努力を続けているが、刑務所内の対応だけではその効果が限定的であることは明らかである。

そこで政府は10年12月、犯罪対策閣僚会議に再犯防止対策ワーキングチームを設置して社会復帰のあり方にも検討を加え、仮釈放後の保護観察期間に行う職探しなどの「出口支援」と共に、検察が不起訴や起訴猶予にした人に対しても必要に応じて社会復帰の道を示す「入り口支援」の充実も進めることになった。


五つの基本方針


(1)国・地方自治体・民間の緊密な連携協力を確保する
(2)刑事司法手続きのあらゆる段階で切れ目のない指導・支援を実施する
(3)犯罪被害者や遺族の存在を十分に認識し、犯罪をした者に犯罪の責任や犯罪被害者の心情を理解させ、社会復帰へ自ら努力させる
(4)犯罪の実態、再犯防止施策の効果検証、民間団体の意見を踏まえて見直しを行い、社会情勢に応じた効果的な施策にする
(5)再犯防止について、広く国民の関心と理解を醸成する


この考え方は、「刑事司法手続きのあらゆる段階で切れ目のない指導・支援を実施する」として今回の推進計画の五つの基本方針の一つに反映された。

また、社会復帰支援には国だけでなく、地方自治体と民間団体との連携協力が欠かせない。さらに国民の関心と理解も必要となる。


就労・住居がカギ


協力雇用主、更生保護施設の拡充めざす


「再犯防止対策で一番大事なキーワードは、やはり住まいと雇用だ」

13年3月15日、衆院法務委員会で公明党の遠山清彦氏はこう訴えた。今も、刑務所への再入者の約70%が再犯時に無職で、居場所のないまま出所した約60%が1年未満に再犯に及んでいる(15年の統計)。

遠山氏は就労に関し、犯罪の前歴があるため定職に就くことが難しい保護観察などの対象者を、事情を知った上で雇用して更生に協力する協力雇用主の制度に言及した。質問当時、登録数は約1万社で実際に雇用している会社は約4%だった(昨年4月現在の登録数は1万8555社だが実雇用はいまだ約4%)。

遠山氏は北九州市で非行少年を雇用する野口義弘氏の「困ったときに助けてくれる人だと気づくと、その瞬間に心を開く」との言葉を引きながら、就労がどれほど更生に役立つかを述べ実雇用増大の必要性を強調した。その方法として、窃盗などで被害が出た場合、受け入れから最初の1年間は協力雇用主に見舞金が出る制度の支給期間延長を提案した。

その後、公明党は15年に再犯防止対策強化プロジェクトチームを設置し、16年5月に政府に提言を行った。(1)出所して居場所のない人に一時的な住居を提供する民間の更生保護施設に対し職員数増大などの支援強化(2)協力雇用主の負担軽減と顕彰などが推進計画に反映された。

これに加え、推進計画には、住居については公営住宅の入居に特別の配慮をすることや、協力雇用主については公共調達で受注機会を増やすための検討なども含まれた。

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