e文化財の活用 保存との両立進める人材育成を

  • 2017.12.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年12月27日(水)付



「人類の財産」とも言うべき文化財を守ると同時に、地域の発展にも生かしたい。

文化庁の審議会が、文化財を活用して地域振興につなげることを柱とする答申を発表した。同様の内容は、きょう政府が公表する予定の「文化経済戦略」にも盛り込まれる。文化財の保存に重点を置いてきた従来の政策からの大きな方針転換といえよう。

具体的には、材質が脆弱なものが多い美術工芸品のうち、石や土、金属などで作られた国宝や重要文化財について、所有者ではない第三者が展示する際の指針を見直し、公開日数の上限を、これまでの60日から150日に延長する。

理由の一つに、展示技術や設備の進歩により文化財の劣化を抑えられるようになったことがある。わが国が有する数多くの貴重な文化財が、内外問わず多くの人の目に触れる機会が増えることを率直に歓迎したい。

国から地方への権限委譲も進める。例えば、文化財の保存・活用に関する「地域計画」を策定し国の認定を受けた市町村には、文化財に指定されている建造物の周辺整備などに関する国の許可を不要にする。文化財を活用した自治体の取り組みを後押しするものとして評価できよう。

指摘しておきたいのは、初めから「活用ありき」であってはならないことだ。傷みやすい文化財は多く、修復にも人手と時間がかかる。活用を進めつつ、保存にも万全を期すべきであることは言うまでもあるまい。

最も大きな課題は人材の確保である。

実際、文化財の保存や活用を進める上での課題を聞いた文化庁の調査では、専門家や職人技術者の不足を挙げる自治体が最多だった。また、保存に必要な原材料の入手が次第に難しくなっていることも懸念されている。

この点、政府は来年の通常国会で文化財保護法の改正をめざしており、来年度予算案には文化財に関する人材育成や修復を進めるための施策を盛り込んだ。

文化財を確実に次代へ継承する視点と併せて、魅力ある地域づくりにどう生かすか。国会でしっかり議論を深めたい。

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