e改正民法 20年施行へ「約款」の周知徹底を

  • 2017.12.18
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年12月18日(月)付



生活に身近な契約のルールが大きく変わる――政府は先週、契約に関する規定を120年ぶりに変える改正民法を2020年4月1日から施行することを閣議決定した。

明治生まれの契約ルールは今、グローバル化や少子高齢化という社会変化への対応を求められている。改正民法は特に、保険の契約書やインターネットの利用規約などで既に広く利用されながら民法には規定のない「約款」に関する条文を新設した。

「約款」のルール新設の影響は大きい。政府はメディアを活用した国民への周知、担当者による業界への説明など全力で取り組んでほしい。

「約款」は現代社会に不可欠である。本来なら、事業者と顧客が向き合って取引の内容を交渉して決めるのが契約の姿である。しかし、同種の契約を迅速・大量に締結するには、事業者が契約内容を定型化して顧客に示し、判断をしてもらう方が合理的である。この定型化された取引条項が「約款」と呼ばれ、鉄道やバスの運送約款など日常的に活用されている。

しかし、顧客が「約款」の全ての条項を認識できるわけもなく、後になって「そんなことは知らなかった」というトラブルも多発する。若年者や高齢者が専門的な「約款」を正しく認識することは難しく、また、一般的に言っても分厚い保険約款を正確に理解することは困難だろう。

裁判では、民法の諸規定をさまざまに解釈して「約款」トラブルに対応してきたが、いまだに確立した判例もなく不安定な制度だ。そこで改正民法は、事業者と顧客の双方が安心して使える制度になるようルールを新設した。

まず、「約款」を契約内容とする旨の合意があるか、そのことをあらかじめ相手に表示しておけば、仮に顧客が「約款」の条項を認識していなくても合意したとみなす。

一方で、目的の商品以外の商品まで購入を義務付ける抱き合わせ条項など、顧客の利益を一方的に害する条項については合意したとはみなさないことを明記した。

前者は事業者に、後者は顧客に有利な内容であり、双方共に新ルールの十分な理解が必要である。政府の周知徹底の努力が求められる。

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