e"木づかい"条例

  • 2017.12.11
  • 情勢/経済
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公明新聞:2017年12月9日(土)付



連携のカギ握る協議会

関係者が県材活用へ認識共有



全国有数の木材生産県であるにもかかわらず、県内に需給のミスマッチを抱える栃木県。その要因について、公明党栃木県議会議員会の野澤和一議員は、「県産材の流通は生産者本意の計画が優先されるため、末端の建築業では不足分を他県や海外に頼らざるを得ない」と指摘する。解決のため、野澤議員が「川上から川下までを結ぶ連携が不可欠だ」と議会質問で訴え続けてきた結果、主張の一部が、このほど形になった。

県議会で今年10月10日、議員提案により、県内の林業や木材産業の増進を図るための「とちぎ木づかい条例(愛称)」が成立し、同18日に施行された。同条例の特筆すべきは、木材流通の川上と川下をつなぐ「協議会」の設置を明記した点にある。

この協議会では、これまで連携の薄かった森林所有者、木材産業事業者、建築関係事業者など、木材流通に関わる業界の代表者が同一のテーブルに着き、川下の建築計画や県材活用への認識を共有することで、需給のミスマッチ解消をめざす。

県林業木材産業課の大野英克課長補佐によれば、県は今年度中に20団体ほどの関係機関を招集し、1回目の協議会を開く。その後、四半期に1度のペースで定期開催するとともに、実務者レベルでの会合を月1回の頻度で持つ。また、この協議会には研究機関やマスコミも加え、「県全体で地元材を使っていこう」との機運を醸成する。

川中で木材の加工を取り扱う業界団体の栃木県木材業協同組合連合会の林紀一郎理事長は、木づかい条例に定めた協議会に期待を寄せる一人。林理事長は、取引量を定めた協定を結ぶなど、これまでも部分的な連携はあったものの、「末端のユーザーの生の声を聞く機会は少なかった」と指摘する。また、国産材の価格は外材に比べて為替の変動に左右されにくいことや、多品目にも対応する製材工場の技術革新に触れ、協議会を通して「地元の木に対する意識が変われば需要も広がるはずだ」と話している。

条例制定を受け、野澤議員は「林業の共同体経営のモデルを築く第一歩。協議会を実効性あるものにしていきたい」と語った。

「祖父が植えた木を孫が切る」と言われるほど、半世紀に及ぶ歳月と手作業で循環する林業。森林も手入れされることで荒廃せずに生きてきた。その持続可能性を求め、今回、木づかい条例という1本の苗木が植えられた。50年後の未来へ、栃木県の挑戦は始まったばかりだ。

【この連載は社会部の久世源太が担当しました】

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