e性暴力被害者の支援拠点が拡大

  • 2017.12.06
  • 生活/生活情報
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公明新聞:2017年12月6日(水)付



傷ついた心と体をケア

病院型で運営 治療、相談に細かく対応

佐賀県



性暴力に遭った被害者が相談や治療など、心と体のケア支援を一カ所で受けられる「ワンストップ支援センター」の設置が各都道府県で進んでいる。強姦やDV(配偶者からの暴力)などによる心身への苦痛は深刻で、被害者に寄り添う支援センターの整備は急務。そこで、全国に先駆けて、行政主導で開設した佐賀県の取り組みを紹介する。

佐賀県のワンストップ支援センターは2012年7月に開設された。県の委託を受け、佐賀市にある県医療センター好生館の「性暴力救援センター・さが(さがmirai)」と、県立男女共同参画センターに設置されている「県DV総合対策センター」が連携しながら、その役割を担っている。

佐賀の支援センターは、産婦人科医療が提供可能な「病院拠点型」。「さがmirai」が性感染症の検査など医療対応が必要となる急性期の支援を担当する一方、DV総合対策センターが心のケアなど中長期の支援を担う。どちらの施設にも窓口があり、個々の事情に応じて連携し対応する。カウンセリングは、1人当たり29回分まで無料。母親らとも面談し、被害者の生活環境にも目を配る。

09年に県内の未成年女子が強姦被害に遭い、心の傷に寄り添う支援体制を求める声が上がったことが設置の契機となった。10年度にDV総合対策センターや関係機関などによる専門部会を発足。議論の結果、病院拠点型の体制が必要だと判断した。

DV総合対策センターの原健一所長は、「性暴力、性犯罪被害に遭って間もない急性期は婦人科や産科の対応が必要となる場合が多い。被害者の将来にわたる健康問題を考えた時に、病院とつながることがとても大切です」と語る。

佐賀県では、支援センターの運営費は県の一般財源から支出。現場の相談員については、DV総合対策センターのスタッフや、好生館の医療ソーシャルワーカーが担うことで、既存の人材を生かす工夫を凝らしている。現在、急性期の医療対応に限って24時間体制で実施。相談の24時間化も模索している。

開設から約5年半で、支援センターに寄せられた相談は延べ1200件を超す。年々、その内容は多様化しており、被害者が必要とする支援も多岐にわたる。このため相談員の研修にも力を入れている。

これまでの経験を踏まえ、原所長は「病院拠点型が望ましいと思うが、まずは地域にセンターが設置されることが先決。その後、地域の実情に応じて、寄り添う形を見いだせればいいのでは」と語っている。


国、交付金で後押し

来年度中にも 全都道府県に設置


性犯罪の被害は、2016年は強姦の認知件数が989件、強制わいせつの認知件数が6188件に上った。だが、これは警察に届け出のあった数に過ぎない。

内閣府が15年3月に公表した「男女間における暴力に関する調査結果」によると、異性から性暴力被害に遭った時期は、未成年と20代が突出。また、被害後も「恥ずかしい」「自分さえ我慢すれば」などの理由で、約3人に2人は誰にも相談できずにいることが明らかになっている。

性暴力被害者への支援については、これまで多くの民間団体が当たってきたが、事態を重く見た国も、2020年までに全都道府県に最低1カ所以上の支援センター設置を目標に取り組んでいる。17年度からは、センターの開設費や運営費などに充てられる交付金を新設し、自治体の設置を後押ししている。

今年度は岩手や秋田、石川の三県で相次いで設置され、現在、41都道府県に計42カ所整備されている。早ければ18年度中には全都道府県に設置される見込みだ。

支援センターは、主に病院拠点型のほか、相談窓口が拠点となり病院などにつなげる「連携型」がある。一番多いのが連携型で、病院拠点型は8施設ある。


体制の充実・強化へ公明が推進役


公明党は被害者支援の充実に向け、党女性委員会の「女性の元気応援プラン」や、自民、公明両党によるプロジェクトチーム(PT)の提言などで、早期に支援センターを全都道府県に1カ所以上整備することを政府に求めてきた。

特に、新設された交付金は、公明党が自民党とともに与党PTで政府に強く要請したもの。18年度予算の概算要求でも、今年度を上回る予算額を求めるとともに、交付金の恒久化を要望している。

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