eコラム「北斗七星」

  • 2017.12.06
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年12月6日(水)付



久しぶりに訪れると道に迷うことが少なくない。東日本大震災の大津波に襲われた沿岸被災地では、かさ上げによる宅地の造成や市街地整備が進み、街の表情は日々、移り変わっている◆先日、宮城県石巻市で市民による語り部活動を続ける「みらいサポート石巻」が主催する南浜町の"まちあるき"に参加した。一帯は「石巻南浜津波復興祈念公園」となる計画だが、コースの地域は工事前で、道路や家の基礎が残っていた◆案内は60代と思われる2人の元住民。「ここでよく髪を切ったな」「船に乗る時は、その店で買い物したのさ」......。コンクリートの塊とアスファルト舗装を雑草が覆う光景を指さし、そこに店や家があるかのように話し続ける姿に気付かされた。住民にとって、この場所は"被災地"ではなく"故郷"だということに◆「盛り土の上に新しい町が復興するのはワクワクするけど、震災前の町の風景と住民の思い出を残したい」。仙台市で先月、開催された世界防災フォーラムの前日祭で、震災後から行っている町の定点観測などの活動を発表したのは岩手県立大槌高校の復興研究会。若者目線による復興への取り組みが共感を呼んでいた◆まもなく3.11から6年9カ月。失った故郷を忘れず歩む人々に思いを重ね、あの日の記憶を伝えていきたい。(川)

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