eコラム「北斗七星」

  • 2017.11.30
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年11月30日(木)付



知的障がいのある青年と先日タクシーに乗った。車が停車しシートから腰を浮かせた彼が、床に落ちていた100円硬貨をサッと拾い上げると運転手に渡した。無言のさりげない行為◆すがすがしさを覚えたのは最近、一流企業の不正が相次ぎ発覚し、うんざりしていたからだ。神戸製鋼所の製品強度データ改ざん問題、日産自動車の無資格従業員による新車検査問題などだ◆不正と言えば、20年前の11月、四大証券の一角を占めながら会社創立100年目にして廃業した山一証券の出来事があった。同社の元常務・河原久さんの『山一証券失敗の本質』を読んだことがある◆そこで河原さんは、こう指摘していた。「社長の思考と意思決定のなかには、倫理性、道徳性が存在していなければならない」「社長にこうした道徳心が欠落していると、かならず会社は衰退する」◆一方、英ロンドン大研究チームの発表によると「不正直な行動を繰り返すうちに、脳の感受性が下がり、不正直の度合いが次第に大きくなる」とか。報じた朝日新聞の見出しは『ウソはつくほど慣れる』◆不正も同じだろう。「歴史は何も教えない。しかし、その教訓を学ばないものを罰する」(ロシアの中世史学者)。先の著書で河原さんが引いていた。<正直は一生の宝>ということわざもある。(六)

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