eコラム「北斗七星」

  • 2017.11.29
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年11月29日(水)付



自分の作品で好きなのは? 没後10年を迎えた作詞家・阿久悠は生前、よくこう問われた。「北の宿から」など、作詞した曲は5000を超えるだけに、関心が寄せられるのも頷ける◆阿久の答えは1975年作の「時の過ぎゆくままに」。当時を「堕落の美が似合うようになってきた気分で、ぼくは気に入っている」と自著『歌謡曲の時代』(新潮文庫)にある。もし今、時の過ぎゆくままに身を任せたらどうなろう。方向を見失うほど流れは速い◆人工知能などを搭載した自動運転車。政府は国際標準に沿いレベルを5段階で定義。レベル5は、どこでも自動運転可能な"究極の車"だが、独BMWは2021年までに実用化をめざしている。垂直に離着陸し、道路も走る「空飛ぶタクシー」は米企業が20年の実現に向け開発中だ◆片や、宇宙ステーションと地上をエレベーターでつなぐ構想やロケットで世界の主要都市を結ぶ旅客輸送計画も。まさにアニメの現実化である。勿論、課題は多い。車に限っても事故を起こした際の責任が現行法上、不明確。テロ対策など安全をどう担保するかも練る必要がある◆歌謡曲が「時代を食って巨大化する妖怪」(阿久)なら、技術は想像を糧に成長する"生き物"だ。新潮流に政治がどう関わり、豊かな社会へとつなげるのか。岐路を迎えている。(田)

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