eコラム「北斗七星」

  • 2017.11.10
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年11月10日(金)付



「クフ王は、知恵の神トト神の聖なる秘密の部屋を探し求めた。自らのピラミッドに同じ物を作るために」。米映画『インディ・ジョーンズ』シリーズを思わせるような場面。だが、これはれっきとした実録である◆所蔵しているのは独の博物館。紀元前2589年から23年間、古代エジプトを統治したとされるクフ王に関する記述が古代の文献にある。謎に魅せられた末の成果なのだろう。名古屋大など国際研究チームがクフ王の大ピラミッドにある未知の巨大空間を発見した◆石の建造物では最大規模の世界遺産、大ピラミッド。ところが、4500年以上経た今も内部の構造で分かっているのは1割に満たない。遺品も不明だ。発見された空間は地上60メートル地点にあり、全長30メートル。新幹線1両分の広さという(NHK)◆調査には、宇宙から降り注ぐ素粒子を使って透視するという最新技術が用いられた。いわば、ピラミッドの"レントゲン検査"である。英科学誌で公表されるや、世界を駆け巡ったこともうなずける◆ちなみに、建造に携わった労働者は農閑期に王が集めた農民。家族と暮らし、衣食住も保障されていた(『エジプト発掘』NHK出版)。「古代エジプトは公平で平等な社会だった」との研究も。文明を永続化させる知恵とは何か。巨大空間とともに興味は尽きない。(田)

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ