e核禁条約と賢人会議

  • 2017.09.11
  • 情勢/国際

公明新聞:2017年9月9日(土)付



違法化の規範 高く評価
公明、被爆地での開催を提案
保有国と非保有国の溝埋める対話不可欠



【問い】核兵器禁止条約の採択で核兵器保有国と非保有国の対立が懸念される中、11月に広島市で核軍縮の進め方を議論する「賢人会議」の開催が決まりました。なぜ日本が条約交渉に参加せず賢人会議を設立したのか、公明党の考えも含めて教えてください。(大阪市 S・Y)

核兵器禁止条約(核禁条約)は、今年7月に国連本部で開催された条約交渉会議で採択されました。核兵器を違法化する初めての規範であり、「核兵器のない世界」への大きな一歩となることは間違いありません。

ただし、核保有国と、日本や韓国、北大西洋条約機構(NATO)加盟国など核保有国のいわゆる「核の傘」に国の安全保障を依存している国々は会議に参加しませんでした。一方、オランダはNATO加盟国ですが会議に参加し反対票を投じました。

この採択を巡って、核兵器の非人道性を訴えて条約を推進した国々と、核兵器によって戦争を防ぐという核抑止論を主張する核保有国との溝は深まりました。しかし、現実の国際政治の中で核が存在することは事実であり、核保有国を抜きにして核廃絶を実現することはできません。条約の採択を推進してきた被爆者団体や反核NGO(非政府組織)も、条約の採択が到達点ではないとしており、ここからが核廃絶の正念場です。

核軍縮については、日本政府も、核保有国、非保有国も2020年NPT(核拡散防止条約)運用検討会議の成功に向けてNPT体制の維持・強化が必要であるとの認識は共有しています。まずは核保有国と非保有国の溝を埋める対話が不可欠です。「核兵器のない世界」の実現には、核禁条約の採択などを巡って深まった核兵器保有国と非保有国の亀裂の橋渡しが求められており、これこそ唯一の戦争被爆国である日本の責務です。

このため日本政府は今年5月、「賢人会議」の設立を表明しました。公明党の党核廃絶推進委員会(座長=浜田昌良参院議員)や国会質疑などにおける強い主張も受け、11月27、28の両日に被爆地の広島市で初会合を開催します。

賢人会議は、同会議の座長を務める白石隆・前政策研究大学院大学長を含む日本人6人と、核保有国の米国(2人)やロシア、中国、フランス、非保有国のオーストラリア、ドイツ、カナダ、核兵器禁止条約賛成国のエジプト、ニュージーランドの外国人10人の計16人の有識者や被爆者で構成されます。核軍縮を実質的に進展させるための提言をまとめ、来年4月に開かれる20年NPT運用検討会議の準備会合に提出する予定です。

公明党は、核禁条約を高く評価しており、同条約の規範の下で核廃絶への具体的な歩みを進めていきます。その上で、核廃絶は核保有国と非保有国の対話の積み重ねの上にあると考えており、双方の溝が深まり、核軍縮を着実に進めるための現実的な対話がなされず、核軍縮ができない状況は絶対につくってはならないとの立場です。それだけに、賢人会議を"真の橋渡し"のスタートと期待しており、各国が「被爆の実相」を共有して実効性ある提言をまとめられるよう、被爆地開催を提案、推進しました。

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