e過疎自治体 現役世代の転入 どう進めるか

  • 2017.08.24
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年8月24日(木)付



過疎地域に指定された自治体は昨年、797市町村に上った。全体の半数近くが過疎に悩んでいる。深刻な事態と言わざるを得ない。

そこに、明るいニュースが飛び込んできた。過疎地域の11.7%に当たる93市町村が、2010年から15年までの5年間で、転入者が転出者を上回る「社会増」を達成していたと、民間の専門家らでつくる「持続可能な地域社会総合研究所」が発表した。

豊かな自然などに魅力を感じ、都市部から現役世代の移住が増えたという。人口集中を是正し、各地で活力ある社会をめざす地方創生につながるよう期待したい。

3年前、日本全体の約半数に上る896自治体を「消滅可能性都市」と位置付けた日本創成会議の報告書は社会に衝撃を与えた。今回、社会増となった自治体のほとんどは「消滅する可能性が高い」と指摘された地域や、離島、山間部。地理的条件が厳しい地域から脱過疎化への"のろし"が上がった形だ。

増加率が全国トップの鹿児島県十島村は、就農希望者に村営住宅や空き家を格安で提供するなど、手厚い支援で移住者を増やした。定住希望者向けの情報誌を発行し、広報活動にも力を入れている。

第2位の新潟県粟島浦村は、小中学校に島外の児童や生徒を受け入れ、自然体験や島民との交流が特徴の「しおかぜ留学」を13年度から実施し、人口増につなげた。

こうした成功例を、懸命に知恵を絞る他の自治体も共有し、各地の実情に合わせて展開できるようにしてほしい。

わが国は人口減少時代に入り、多くの過疎地域は厳しい状況に置かれている。予算や人手不足で、思うように対策が進まない自治体がほとんどだ。こうした地域への目配りを忘れてはならない。

今回の結果を公表した研究所は、人口を安定化させる条件に、子ども人口の維持や高齢化率の低下を挙げた。つまり、子どもを生み育てる、現役世代の定住がカギを握ると言っていい。

政府は、過疎地域におけるICT(情報通信技術)基盤の整備や、都市部と同じように働ける環境の実現推進など、地域活性化に向けた支援にさらに力を入れるべきだ。

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