e水俣条約発効 日本主導で実効性確保したい

  • 2017.08.18
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年8月18日(金)付



生物に対して強い毒性を持つ水銀の汚染を防ぐ第一歩といえよう。

水銀による環境汚染や健康被害を国際的に防止する「水銀に関する水俣条約」が16日に発効した。水俣病のような水銀被害を経験した日本の働き掛けが実を結んだものだ。同条約を機に、鉱山での水銀採掘から輸出入、使用、廃棄まで、全ての過程で国際的に規制する取り組みが始まる。

具体的には、2020年までに一定量以上の水銀を使った電池や体温計、蛍光灯といった製品の製造・輸出入を原則禁止する。また、新しい鉱山からの水銀の採掘を禁止し、15年後には既存の鉱山でも採掘できなくする。

水俣条約という名称には、水俣病の悲劇を二度と繰り返さないとの決意が込められた。日本をはじめ、米国、欧州連合(EU)、中国、アフリカなど74カ国・地域が条約を締結している。水俣病特措法の制定など、患者の救済と再発防止に全力を尽くしてきた公明党としては感無量である。

ただし、条約の発効はゴールではなくスタートだ。水俣病を経験した日本が、水銀規制を主導的に進めたい。いかに実効性を確保するかが肝要である。日本は、条約の規定よりも前倒しで水銀を使った製品の製造・輸出入を順次禁止する。その意気込みで世界に範を示す絶好の機会だ。

身近な課題としては、家庭で放置されている水銀体温計や蛍光灯などの回収が欠かせない。環境省のモデル事業を活用し、無料回収を行っている自治体もある。こうした動きを広げていきたい。

水銀の危険性に対する意識が薄い発展途上国への支援も重要だ。途上国の小規模な金採掘現場では、金を取り出すために水銀が使われている。現地の人々にとって生活の糧となっているため、条約で禁止できなかったが、少しでも水銀の使用量を減らせるような代替策を探したい。

9月下旬には、スイスのジュネーブで第1回締約国会議(COP1)が開かれ、水銀対策の現状や、途上国への資金提供の仕組みなどが議論される。各国のニーズを踏まえ、日本が持つ水銀を大気中などに排出させない技術や、廃棄物から水銀を回収する高度な技能を提供してほしい。

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