eストレスチェック 実施率向上と活用へ知恵絞れ

  • 2017.08.07
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年8月7日(月)付



従業員が50人以上の事業所に対し、労働者の心の健康状態を年に1度、点検するよう義務付けた「ストレスチェック制度」の実施状況を、厚生労働省が初めて公表した。さまざまな課題が浮き彫りになっており、対応を急ぎたい。

まず注目すべきは、事業所の規模によって実施率に差があることだ。実際、2015年12月の制度開始から1年半たった今年6月末時点の実施率は約83%だったが、従業員が1000人以上の大規模事業所は実施率がほぼ100%なのに対し、50~99人の事業所は約79%にとどまっている。

ストレスチェックは、50問程度の質問に答えてストレス度を確認するもので、厚労省のホームページに掲載されている「実施プログラム」をダウンロードすれば容易に行うことができる。

とはいえ、小規模事業者ほど制度の意義や活用について理解が不十分であったり、担当者が確保できないなどの理由があることが考えられる。厚労省は、自治体や各地の労働局と連携し、未実施の事業所へのきめ細かいフォローに努めてほしい。

業種別の実施状況にも目を向けたい。厚労省の調査では、運輸交通業や接客娯楽業などで実施率が低いからだ。

実は、こうした業種は仕事の負担などのストレスで、健康リスクが比較的高い傾向にある。各業種の閑散期をストレスチェックの「推進期間」に位置付けて実施を促すなど、各業種の実情を踏まえた推進策を検討してはどうか。

結果をどう活用するかも重要な視点だ。全事業所のうち、結果を部署やグループごとに集計・分析した事業所は約65%、医師による面接指導の実施は約27%にすぎない。

結果を活用するため、神奈川県のあるメーカーでは、社内状況を理解する管理職OBがカウンセラーとなり、ストレスチェックの結果を業務内容と併せて分析し、職場にアドバイス。その結果、心の不調による休業者が減少したという。

うつ病など心の病による労災認定が過去最多を更新し、働き方改革や労働環境の改善が喫緊の課題となる中、ストレスチェックを全ての事業所が実施・活用できるよう知恵を絞りたい。

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