e国立の教員養成大学 縮小は地域の実情を考慮して

  • 2017.08.04
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年8月4日(金)付



少子化により教員の需要が減少する中、国立大学における教員養成のあり方について議論を深める契機としたい。

文部科学省の有識者会議は、国立の教員養成大学・学部の再編・統合などを促す報告書案を示した。同会議は今月中にも最終案を取りまとめる方針だ。

現在、教員免許の取得を卒業要件とする国立の単科大学(教育大学)や教育学部のある総合大学は44大学。4年間の体系的なカリキュラムにより、質の高い教員の養成を進めている。だが、公立小中学校の教員需要に限っても2027年までの10年間でほぼ半減するという。

このため報告書案は、▽地域ごとの需要に基づいた入学定員の見直し▽採用数の少ない教科の学科を近隣の大学間で集約▽都道府県を越えた教育大学や教育学部を統合―などを盛り込んだ。自治体などと協議し、21年度末までに大学ごとに結論を出すよう求めている。

少子化という現実を見据えれば、早く手を打つに越したことはない。しかし、大学側や地元自治体にも主張したいことがあるだろう。とりわけ、人口減少が著しい地方の危機感は強い。

例えば、"地元出身"教員の減少だ。実際、教員の多くを地元大学の卒業生が占めているところは少なくない。各自治体が地方創生に知恵を絞る中、地域を良く知る教育人材の存在は大きいだけに、地元大学出身の教員減少に対する懸念は十分に理解できる。

大学側の努力にも目を向けたい。ある教育大学では、スクールカウンセラーなど学校現場で活躍する人材の育成をめざす学科を新設した。小規模校やへき地での教育に対応できる教員の養成に力を入れるところもある。

報告書案では国に対し、改革を進める大学への財政支援を検討するよう求めている。教員養成大学としての強みを発揮する意欲的な試みも後押しする姿勢を国が示すことは、大学や自治体の懸念を和らげることにつながろう。

大学・学部の規模縮小は、あくまでも大学側が主体的に検討すべきであることは当然だが、円滑に進めるためには国の役割も大きいことを指摘しておきたい。

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