e地方議会改革に 大学の「知」生かそう

  • 2017.07.31
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年7月29日(土)付



協定結び、政策力磨く
講師招き研修、学生と意見交換



地方議会改革においては、議会の「見える化」などとともに、議員の政策立案能力をいかに高めるかが課題だ。そこで近年、地域の大学とタッグを組み、その「知」を政策立案や質問力の向上に生かす地方議会が増えている。全国に先駆けて大学と連携協定を結んだ山梨県昭和町議会などの事例を紹介する。


山梨・昭和町


「昭和町議会は議会改革の目標の一つに『学ぶ議会』を掲げている。それを具体的な形にしたのが大学との連携だ」と強調するのは、同町議会の塚原將司議長だ。

同町議会は2008年に、山梨学院大学ローカル・ガバナンス研究センターと連携協定を締結。大学が持つ専門的な知識や学生の視点を取り入れ、議員の政策立案などに役立てている。

例えば、同町議会は毎年、定期的に同大学から講師を招き、研修会を開催。今年も8月から12月までの期間に6回の研修会を予定している。テーマは「議会基本条例の見直し」「コミュニティバス」などで、地方政治や地域の課題について学ぶ。

また、同大の学生が街づくりに関する政策提言を行い、議員と意見交換するワークショップも年1回実施。学生の斬新なアイデアが政策として採用され、町政に反映される事例も多く、役場庁舎内へのレアメタル回収BOXの設置や校庭の芝生化、災害時議員行動マニュアルの策定などを実現している。

遠藤辰男副議長は「大学の研究者や若い学生の意見は良い刺激になる。議会質問の参考にする議員もいる」と説明する。

こうした連携は、大学側にも、人材育成の面でメリット(利点)が大きい。

ワークショップでの交流は、学生が普段はあまり接することのない地方議会、議員を身近に知ることができるチャンスで、教育効果も高い。同大学ローカル・ガバナンス研究センター長の江藤俊昭教授によれば、ワークショップを体験した学生が地方公務員を志望し、就職につながったケースもあるという。

江藤教授は「大学が少子化で生き残りをかける中、その専門性を議会改革に生かすことで、特色をアピールできる機会になっている」と説明する。なお、山梨学院大学は、山梨県町村議会議長会とも連携協定を締結しており、人口減少に悩む小規模町村議会のあり方について検討を進めている。

公明党の河田あけみ・昭和町議は「今後も大学と協力し合い、住民と共に歩む議会をめざし改革を前進させたい」と話していた。


各地で広がる連携


大学と地方議会が連携する動きは各地で広がっている。

滋賀県大津市議会は現在、龍谷、同志社、立命館の3大学とパートナーシップ協定を締結し、研究者を講師として招くなど政策立案能力を高めている。

特に16年4月からは、同市議会公明党の後押しもあり、議会図書室の機能強化のため、議会が龍谷大学の図書館を円滑に利用できる仕組みを整えた。

議員の調査・研究のための書籍を収集する議会図書室だが、同市議会では図書の充実や司書の配置は財政的に難しい。そこで、多くの学術書などを所蔵する龍谷大学の図書館を利用させてもらうことで、その機能を補完するのが狙いだ。


調査に図書館活用も


具体的には、それぞれの議員と議会事務局に、龍谷大学図書館の入館証が発行される。議会事務局を通して、大学図書館に文献のレファレンス(調査相談)もでき、照会してもらった文献を活用して議会質問を行った議員もいたという。

一方、北海道議会は今年1月、札幌大学、同大女子短期大学部との間で、学生の議会傍聴や地域の課題に関する共同研究の実施などを盛り込んだ連携協定を結んだ。同議会事務局は「秋ごろをめざし、学生インターンシップの検討も進めている」と説明する。

京都府福知山市議会は、大学と協定は締結していないが、連携事業を進めており、8月に福知山公立大学の学生との意見交換を実施する予定だ。同市議会の大谷洋介議長(公明党)は「学生との交流を土台に、連携を強化していきたい」と話す。

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