eIT業界の公正確保 情報独占による弊害どう防ぐか

  • 2017.07.28
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年7月28日(金)付



ネット通販やSNSなどを運営するIT企業は、私たちの日常生活と深く結び付いている。同時に、大手企業による寡占や独占が進むと公正な競争が阻害され、消費者に不利益を与える場合もある。

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、大手IT企業グーグルがEU内のネット検索市場で公正な競争を妨げたとして、24億2000万ユーロ(約3000億円)に上る制裁金の支払いを命じた。

EU内のネット検索市場で90%以上のシェアを誇るグーグルは、検索結果のページで同社の商品比較サイトを目立つように表示し、他社のサイトよりも優遇したという。

グーグルは日本の独占禁止法に相当するEU競争法に違反したとされた上で、過去最高額の制裁金を科せられた。寡占・独占が進むIT業界の現状に対する欧州委の強い警戒心の表れであろう。

IT企業のネット検索サービスは、商品購入履歴といった個人データの収集・蓄積により利用者にとって最適な結果を提示できることが特徴で、利用者が増えるほど利便性は高まるが、大手企業の市場支配も強まる傾向がある。

こうした優位な立場を乱用して競合他社を締め出したり、新規参入を阻むようなことがあってはならない。公正な競争が妨げられれば、業界の健全な発展が阻害され、最終的には消費者の不利益になるからだ。

欧州委が鳴らした警鐘を、日本も真剣に受け止めたい。

折しも先月、公正取引委員会が「データと競争政策」に関する報告書をまとめた。大量のデータが一部事業者に集中しつつある点を指摘し、競争が制限され消費者の利益が損なわれる場合、独禁法を適用する方針を示した。

公正なIT業界の実現に向け、公取委が強い姿勢を示した点は評価したい。ただ、独禁法は価格の不当な引き上げなどへの対応が主だが、ネットのサービスは無料な場合が多く、規制するのは難しいとの指摘もある。今後の大きな論点の一つであろう。

業界の特性に合った独禁法適用の基準作成や、専門性を持った人材の育成も求められる。IT業界を挙げて健全な市場の確立に努めることも忘れてはならない。

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