eわたしの"手"思いどおり

  • 2017.07.28
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年7月28日(金)付



小児用の「筋電義手」普及へ挑戦
訓練施設、専門人材が不足
公明、体制整備に向け突破口
兵庫県立リハビリテーション中央病院



筋肉が発する電気信号を利用し、本人の意思に応じて指を動かせる「筋電義手」。一般的な「装飾義手」と違い、習熟すれば手に近い繊細な動作が可能になるが、日本では普及が遅れている。この義手を子どもたちに届けようと挑戦する兵庫県立リハビリテーション中央病院(神戸市西区)を訪ね、同病院の取り組みを支える兵庫県立福祉のまちづくり研究所所長の陳隆明医師に話を聞いた。

「パーしてみようね」

作業療法士が優しく声を掛けると、石川美穂ちゃん(2)は、その"手"を静かに開いてみせた。この日は遊びの中で筋電義手を使う訓練。アンパンマンの福笑いなどに挑戦した。

美穂ちゃんは生まれつき右手の肘から先がない。筋電義手の訓練を始めたのは1歳半からで、ようやくグーとパーができるようになった。母の真希さんは「幼稚園の就園までに扱えるようになれば」と期待する。

ただ、月2回、滋賀県守山市から片道2時間かかる通院の負担は大きい。真希さんは自分に言い聞かせるように、「私たちはまだ恵まれている。通えない人は、訓練もできないのだから......」と語った。

兵庫県立リハビリテーション中央病院には全国で唯一、子どもたちに訓練用の筋電義手を無償で貸与する「小児筋電義手バンク」という仕組みがある。県の協力も得て2014年6月に創設された。現在、購入した筋電義手を県内外の計39人に貸し出している。

筋電義手のほとんどはドイツ社製で1本約150万円。購入の際は国の制度の対象となり、「使いこなせること」などを条件に補装具費として公費支給があるが、訓練用は対象外だ。使いこなそうにも訓練用の入手が難しい。こうした状況を打開しようとつくられたのが小児筋電義手バンクだ。

現在も、兵庫県のふるさと納税制度などを活用して資金を募る。福祉用具の研究などを行う福祉のまちづくり研究所はさらに、軽量、安価な国産義手の開発もめざし、小児筋電義手の普及を進めたい考えだ。

生まれつき手や足がない子どもの出生は年間400人ともいわれ、本格的な普及には国の取り組みが欠かせない。

今年4月4日の参院厚生労働委員会では、公明党の山本香苗さんが普及に向けた体制整備を訴え、塩崎恭久厚労相から「子どもたちに筋電義手を届けられる環境整備を、しっかりやっていく」との答弁を引き出した。国の取り組みはこれからだ。

山本さんは「筋電義手の存在を知らない、また知っていても訓練を受けられず、筋電義手にたどり着けないお子さんがいる。必要とする子どもが筋電義手を使えるよう全力で取り組みたい」と語っている。


裾野広げる支援を期待


福祉のまちづくり研究所 陳隆明 所長


筋電義手の訓練は大人であれば2カ月、子どもは2~4年程度要するが、習熟すれば、いろいろなことができるようになる。子どもの場合は早いほど動作が"自然の手"と近くなり、0歳児から訓練を始める例も多い。

筋電義手の裾野を広げるには、日本人の体格にあった小児用の開発とともに、訓練できる拠点施設を増やし、作業療法士など専門人材の育成も必要だ。公明党には引き続き支援をお願いしたい。2020年東京五輪・パラリンピックの際には、国産のきれいな筋電義手を着けた聖火ランナーが走る姿を、夢見ている。

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