e8K技術の医療応用 手術や遠隔診療へ期待大きい

  • 2017.07.11
  • 情勢/テクノロジー

公明新聞:2017年7月11日(火)付



現行のハイビジョン(2K)の16倍も鮮明に見える「8K」技術。日本の"切り札"ともいえる最先端の映像技術を医療分野でも活用すべきである。

2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、8K技術の開発が今、急ピッチで進んでいる。早ければ来年にもBSでの実用放送が始まるとされるが、医療分野での活用にも期待が高まっている。

なぜか。超高精細な8K画像で、実物に近い色を再現できたり、早い動きをスムーズに捉えることが可能になり、より的確な診断や手術が可能になるからだ。

8K技術を内視鏡に採り入れれば、医師はこれまで以上に正確に患部を捉え、手術での患部周辺の臓器損傷のリスクを減らすことができる。がんの取り残しも防ぎやすくなる。患者にとっても手術への信頼と安心感が格段に増すに違いない。

遠隔診療にも有効だ。例えば、患者から採取した細胞などから病気の原因や症状を診断する病理医がいない離島の場合、細胞画像を8K技術で病理医のいる病院に送れば、より精度の高い診断が可能になる。医師不足や医療機関の偏在を補う一策となろう。

ただ、普及には課題もある。内視鏡用のカメラやモニターを手術現場に導入するには、一層の小型・軽量化が必要だ。高精細データは大容量のため、遠隔診療で利用するにはデータの圧縮・伝送・復元技術の開発が欠かせない。

このため、政府は今年度から、8Kデータを送るためのネットワークの構築や、同データを活用したAI(人工知能)による診断支援システムの開発を後押ししている。先月、閣議決定した成長戦略にも、8K技術の医療応用が盛り込まれた。

8Kと4K(精度4倍)を合わせたスーパーハイビジョン技術の潜在市場規模は、医療分野だけでも国内で3400億円、世界で2.7兆円と試算される。今後、日本の国際競争力を高める武器になろう。

公明党も8K技術の医療応用に注目している。専門家の意見を聞き、5月には8K画像を活用した病理診断システムの展開を政府に提言した。8K技術を国内外に普及させる環境整備を、政府には急いでほしい。

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