eコラム「北斗七星」

  • 2017.06.01
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年6月1日(木)付



きょう6月1日は「気象記念日」。1875年、気象庁の前身・東京気象台が現在の東京都港区虎ノ門近くで観測を開始した日である。9年後の同じ日には、初めて天気予報が公に出された◆実は「気象」という言葉は当時の日本語にはなかったらしい。気象観測の必要性を明治政府に説いた英国人技術者の言葉を翻訳した際の造語であると、東京気象台の伝習生が述懐している。古川武彦著『気象庁物語』(中公新書)で知った◆言葉ばかりではない。観測機材は英国から輸入。技術も未熟で、天気予報が当たらないことを当時の新聞が批判した記録も。ところが「災害のたびに技術革新を行い、現在の気象庁へと成長」(同著)。例えば、今年4月の「降水の有無」の的中率は86%と高い水準を維持している◆気象庁の守備範囲は広い。気象に加え、地震の観測と津波予測、火山監視など多岐にわたる。気象に限っても次々と画期的事業が。先月からは、雨量などの推移を予測し、危険度を色分けした時系列で発信。夜間の避難を回避するため、警報級となる可能性も事前公表している◆片や国境を越えた貢献も。フィリピンやベトナムでは、日本の気象庁が提供する台風進路予測をもとに自国の情報を作成しているのだ。脅威への応戦。その積み重ねによって力が磨かれるのは、万般に通底する原理だろう。(田)

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