e職場のパワハラ 事態は深刻。官民挙げて対策を

  • 2017.05.08
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年5月5日(金)付



「あいさつしても無視される」「膨大な仕事量を押しつけられる」「仕事をさせてくれない」―。職場でのいじめや嫌がらせなどパワーハラスメント(パワハラ)が急増している。

全国の企業・団体に勤める男女1万人を対象にした厚生労働省の調査結果によると、2016年までの過去3年間でパワハラを受けたと回答した人は32.5%に上り、実に3人に1人が被害に遭っている実態が判明した。

パワハラは、時に被害者の心身に深刻な打撃を与えることがある。大手広告代理店、電通の女性社員が過労自殺した事件でも、背景に上司によるパワハラがあったことが指摘されている。事態の深刻さを厳しく受け止める必要があろう。

調査結果では、パワハラを受けても「何もしなかった」人が4割を超えていた。「何をしても解決にならないと思った」などの理由が目立つ。

相談窓口の設置や社内研修の実施などパワハラの防止・解決に取り組む企業は増えつつあり、離職者の減少といった効果が出ている。こうした取り組みをさらに広げ、官民挙げた対策の強化を求めたい。

企業を取り巻く経営環境の変化にも目を向けてはどうか。例えば、経済のグローバル化に伴い、多くの企業が激しい競争にさらされている。少子高齢化の影響による人手不足も深刻だ。その結果、過大なノルマを押し付けるためにパワハラに及ぶケースは少なくない。

パート社員など多様な雇用形態を採用している企業の中には、従業員間のコミュニケーションが不足し、これがパワハラの温床になるとの指摘もある。こうした社会構造の変化もパワハラ対策に欠かせない視点であろう。

政府が3月に策定した「働き方改革実行計画」には、パワハラ対策の強化が盛り込まれている。社内のコミュニケーションの活性化が業績向上に結び付いたような事例を収集し、啓発に力を入れることにも取り組むべきだ。

従業員が意欲的に働ける職場環境こそ、企業の成長に欠かせない生産性の向上につながることは言うまでもない。

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