e病院の耐震化 命守る拠点だから急ぎたい

  • 2017.04.18
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年4月18日(火)付



災害時、病院は住民の命を守る重要な拠点である。その病院が被災して使用できなくなるようなことは避けなければならない。

厚生労働省が全国の病院の耐震化状況を調査したところ、全体の3割に当たる約2400の病院で耐震化が不十分、もしくは耐震診断を行っていないことが分かった。この中には、災害時に被災地域の傷病者の受け入れで中心的な役割を担う災害拠点病院や、救命救急センターも含まれている。

いざという時、病院が機能不全に陥ると被害を拡大させてしまいかねない。

実際、昨年の熊本地震では、熊本市の防災拠点施設に指定されていた病院で病棟の壁や天井が崩落し、患者の受け入れができなくなったばかりか、入院患者全員が転院を迫られた。

首都直下地震や南海トラフ地震の発生が想定される中である。病院の耐震化をどう進めるかは、喫緊の課題にほかならない。

耐震化を進める上で最大の課題は、多額の費用負担だ。熊本市の例でも病院側は建て替えを予定していたが、資材高騰の影響で着工を延期していたところで被災したという。

国には、病院の耐震化に必要な費用の一部を、自治体とともに補助する制度がある。耐震化が進んでいない病院に対し積極的な広報に努め、耐震化を促すよう政府には求めたい。

用地の確保も課題だ。耐震工事を進めるため、病院の施設を一時的に移転するケースもある。とりわけ民間病院の場合、移転先の土地や建物を探すことについて、地域住民の理解を得ることも含め、行政の後押しが欠かせない。

病院側の意識改革も必要ではないか。

いつ起こるか分からない災害のために今いる患者に迷惑をかけたくない、貴重な資金を最新鋭の医療機器の導入に優先して使いたい、といった考えもあろう。

一方で、地震などで被災し、病院機能が維持できなくなるという最悪の事態をどう防ぐか。そのための手だてを講じておくことも、患者や地域住民の命を守る病院の忘れてはならない責務であることを、重ねて指摘しておきたい。

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