eコラム「北斗七星」

  • 2017.04.07
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年4月7日(金)付



「花王」(山本健吉)と言われる春の桜。満開の便りが届くと、大阪にはしばらくして一つの楽しみが訪れる。一般開放される造幣局の「桜の通り抜け」だ◆全国的にも有名なこの催しの歴史は古い。1883年(明治16年)、造幣局長だった遠藤謹助が「局員だけの観桜ではもったいない。大阪市民の皆さんと共に楽しもうではないか」と提案し、始まったのだ。以来、太平洋戦争中の一時期など4年間を除き、毎年開かれてきた◆桜といえば、ソメイヨシノが一般的。ところが開放される造幣局構内の旧淀川沿いの560メートル区間には、珍種が数多く並ぶ。造幣局の桜は明治初期、品種の多さに加え、珍しい山桜が集められていた藤堂藩の蔵屋敷から移植されたものだからだ◆花弁の先が鎌形の「鎌足桜」、虎の尾のような花の「市原虎の尾」、優雅な容姿を持つ「祇王寺祇女桜」や奈良地方にあった「楊貴妃」も。今年の花「鬱金」の場合は、江戸期、京都知恩院に植えられていたと聞いた。こうした品種は134に上る◆ちなみに、造幣局広報室によれば、提案者の遠藤は近代日本の礎を築いた長州藩士5傑の1人。「うち伊藤博文ら4人が造幣局のトップ経験者」という。「志を立ててもって万事の源となす」(吉田松陰)だ。実質130年に及ぶ通り抜けには今も「庶民と共に」との志が息づいている。(田)

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