eコラム「北斗七星」

  • 2017.03.30
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年3月30日(木)付



「あんを炊いている時の私は、いつも小豆の言葉に耳を澄ましていました」。河瀨直美監督の映画『あん』で、樹木希林さんが演じる老女・徳江のせりふ◆おととしのカンヌ国際映画祭で、「ある視点」部門のオープニングを飾った『あん』は、満開の桜の下、徳江がどら焼き屋をのぞくシーンで始まる。そこで働くことになった彼女が作る、あんはとてもおいしい。店はにぎわい行列ができた。が、彼女がハンセン病だったとのうわさが広まり、客足が途絶える。店を辞め、やがて住んでいた療養所で逝く◆このロケの舞台となった療養所「多磨全生園」(東京都東村山市)に小池百合子知事が、あさって訪れる。都によると現職都知事として58年ぶり◆今月1日の都議会本会議で公明議員が「桜が満開になるころにお越しいただき、入所者を励ましていただければ」と、"実在の徳江"たちの声を代弁。小池知事は、できるだけ早く入所者に会い、長年の労苦をねぎらいたいと応じ、訪問を決めた◆徳江が耳を澄ますのは、「小豆が見てきた、雨の日や晴れの日を想像すること」だという。現場の"小さな声"からその背景にある「雨の日や晴れの日」を感じ取ろうと努める公明議員の姿が重なる。今、幾本もの桜が包む全生園。知事訪問が入所者にとって「晴れの日」になればと祈る。(三)

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