e児童虐待への対応強化へ

  • 2017.03.27
  • 情勢/解説
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公明新聞:2017年3月27日(月)付



関連法改正案のポイント



急増する児童虐待への対応を強化するため、児童福祉法と児童虐待防止法の改正案が今国会で審議されている。家庭裁判所(家裁)による関与の強化が柱の一つで、児童相談所の取り組みを後押しすることをめざしている。


家裁が勧告する新制度


児童相談所の取り組み後押し

厚生労働省によると、全国の児童相談所が2015年度に対応した児童虐待の件数は初めて10万件を超えた。調査を開始した1990年度から25年連続で増え続けており、深刻な状況が浮き彫りとなっている。

児童相談所は、虐待を受けている子どもの安全を確保するため、保護者の同意なしに子どもを引き離す「一時保護」を、所長の判断で行うことができる。一時保護された子どもは、児童相談所の一時保護所に預けられる。

しかし、児童相談所に保護者が反発し、トラブルになることも少なくない。

そこで改正案では、親子を強制的に引き離す前の段階で、児童相談所が一時保護の是非を審査するよう、家裁に申し立てる新たな仕組みを導入する。

申し立てを受けた家裁は、児童相談所に対し、親子関係の改善を促す指導を保護者に実施するよう勧告する。家裁が児童相談所に勧告したことは保護者にも通知される。

指導の内容は、子どもの養育環境を改善させるために児童相談所が行う家庭支援プログラムの受講など。

指導を受けても改善が見られない場合、家裁は、児童相談所による一時保護を認める。

また、家裁は、児童相談所が行った指導の結果報告を踏まえ、虐待を受けた子どもの児童養護施設への入所や里親家庭への委託といった、さらなる措置に進むことも承認する。

改善が見られ、親子の同居が認められた場合も、引き続き指導が必要だと家裁が判断すれば、児童相談所に再度勧告できる。

現行の法制度の下でも、児童相談所は保護者に指導を行うことができるが、実効性に乏しく、保護者が従わないこともある。

改正案では、保護者が児童相談所の指導に従わない場合、家裁がそれを判断材料として、子どもの施設入所などの措置に踏み切ることを児童相談所に認めることも想定されている。これにより、指導の実効性が高まることが期待されている。


一時保護の長期化防ぐ


接近禁止命令の対象を拡大

現行法では、一時保護の期間は原則として2カ月を超えてはならないと規定されている。

しかし、2015年4~7月までのデータを基にした厚労省の推計によると、一時保護が2カ月を超えたケースは年間約3600件に上り、そのうち保護者の意に反するケースが468件あるという。

こうした現状を踏まえ、改正案では、虐待を受けた子どもの一時保護が2カ月を超える際には、児童相談所は家裁に申し立てなければならないとしている。その上で、家裁は一時保護期間の継続が適切であるかどうかを審査し、適切であると判断した場合にそれを認める。

一時保護が2カ月を超える場合は、家裁の承認が条件となることで長期化を抑制できるのではないかと考えられている。

また、一時保護は親権を強く制限する措置であることに配慮し、家裁の判断を仰ぐことで、その妥当性を担保する狙いもある。

さらに改正案では、保護者に子どもとの接触を禁止する都道府県知事による接近禁止命令の対象も見直す。

現在は「保護者の意に反した施設入所など」に限定されているが、同意に基づく入所などにも拡大する。保護者が入所に同意していても、子どもに近づこうとすることがあるためだ。

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