e高齢ドライバーの事故防止へ

  • 2017.03.14
  • 情勢/社会
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公明新聞:2017年3月14日(火)付



改正道交法の狙いと今後の課題
認知症検査を強化
受診者増へ医師の確保急務
警察庁の有識者会議 総合的な対策議論



高齢ドライバーの認知機能チェックを強化する改正道路交通法(道交法)が12日に施行された。状況を正しく理解して適切に対応する認知機能の低下を早期に発見するため、75歳以上の運転者に対して検査の機会を増やして事故を未然に防ぐ狙いだ。ただ、受診者の増加に対応する医師の確保や、制度の周知方法など課題も指摘されている。


■年5万人が診断対象に

改正道交法の施行によって75歳以上の運転者は、3年に1度の免許証更新時の認知機能検査に加え、信号無視や逆走など特定の違反行為をした際も臨時の検査を受けることが義務化される。検査で認知症の恐れがあると判断された場合は、医師の診断を受けなければならない。医師に認知症と診断されると、免許は停止や取り消しになる。

警察庁によると、2015年に認知機能検査の結果などに基づいて医師の診断を受けた高齢ドライバーは4027人。これが改正道交法の施行で、年間5万人ほどに急増すると予想されている。免許取り消しや停止は1472人から約1万5000人と、10倍に増える見込みだ。

法改正の背景には高齢ドライバーによる事故の増加がある。16年に起きた年齢層別の死亡事故件数(10万人当たり)を比較すると、75歳以上は75歳未満の2.34倍に上る。このうち、事故前に認知機能検査を受けていた人の5割近くが「認知症の恐れあり」か「認知機能低下の恐れあり」と判定されていた。


■医師3100人が協力

今後の課題は、高齢ドライバーを診断する医師の確保だ。専門医だけでは足りないため、警察が各地の医師会などを通じて協力を要請した結果、約3100人の一般医師が了承した。

日本医師会は、一般医師に向けた診断書作成の手引をホームページで公表しており、地域によって診断のばらつきがないよう呼び掛けている。

新制度の円滑な実施へ、現場は対策を急いでいる。多くの警察で運転免許センターの窓口に看護師を配置したり、専用の電話を開設して、高齢者らの相談に応じる態勢を取っている。滋賀、三重の両県警は、認知症の専門医ではなくても診断がしやすいよう、新たな書式の診断書を作る予定だ。


■6月めどに提言

より総合的な高齢ドライバーの事故対策を検討するため、警察庁の有識者会議は今年1月から議論を始めている。6月をめどに提言を取りまとめる方針だ。

主な議題は、▽高齢運転者への効果的な交通安全教育のあり方▽認知機能や身体機能の衰えなどで運転の危険性が高まる人をどう把握するか▽免許証の自主返納の促進策▽高速道路の逆走対策――など。

これまでに、運転をやめた高齢者や家族が社会から孤立しないための公共交通システムの整備や、運転能力を実技テストで専門家が判断する仕組みの構築を求める声などが上がっている。


先進技術に期待高まる

少子高齢化が進み、地方の公共交通システムが衰退する日本では、今後も高齢ドライバーの増加は避けられない。こうした中、高齢者の事故防止や運転をやめた人の移動手段として、先進技術を利用した運転支援や自動運転車の開発に期待が高まっている。

高齢ドライバーは他の世代に比べ、運転操作の誤りによる事故が多い。アクセルとブレーキの踏み間違いによる死亡事故のうち、半数近くは75歳以上が引き起こしている。

国土交通省は、2020年までに国内メーカーが販売する新車のほぼ全車種で、踏み間違い時の加速抑制装置と自動ブレーキが装備されるようにし、「安全運転サポート車」として普及させる方針だ。

自動運転車に関しては、無人のトラックやバス、タクシーを用いた公道での走行実験を17年度から本格化する。昨年11月に公道での自動運転の実証実験が行われた秋田県仙北市では、12人乗りバスが時速10キロ程度のスピードで事前に設定されたコースを走り切り、一定の成果を上げた。

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