e安心と希望の未来開く

  • 2017.01.30
  • 政治/国会
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公明新聞:2017年1月29日(日)付



山口代表、井上幹事長の代表質問から



公明党の山口那津男代表と井上義久幹事長は24、25日の両日、衆参両院の本会議で安倍晋三首相の施政方針演説などに対する代表質問を行いました。質問では、安定した政権基盤の下で内外の諸課題に真摯に対処し、安心と希望ある未来を切り開くため、経済再生や、教育施策の充実、働き方改革などの着実な実行などを訴えました。公明党の主張のポイントと、識者の反響を紹介します。


経済再生


好循環へ適切に分配


課題解決型の技術革新が重要

山口代表、井上幹事長は、2012年の自公政権発足以降、生産年齢人口が減っていく中で名目GDP(国内総生産)44兆円の経済成長を遂げたと指摘。その上で、成長の果実を適切に分配し、「希望がゆきわたる国」の実現が、さらなる成長の基盤になると主張しました。

山口代表は、2017年度予算案と税制改正案には、中小企業の所得拡大促進や無年金対策など「成長と分配の好循環」を後押しする施策が盛り込まれており、「早期の成立、執行が欠かせない」と訴えました。また、地方創生に向けて「若者の活躍を通じた地域活性化を後押しすべき」と主張しました。

日本の潜在力を引き出し、経済の底上げを図る成長戦略に関し、井上幹事長は、高齢ドライバーの事故を防ぐ自動ブレーキの普及やロボット開発を例に挙げ、技術革新(イノベーション)を人口減少など日本が直面する課題の解決に生かす「課題解決型」のイノベーション創出に「重点的に取り組むべき」と提案しました。

また、地域の特色ある農林水産物や観光資源をフル活用した地域経済の活性化を求めました。

これに対し、安倍首相は「成長と分配の好循環をつくり上げ、頑張れば報われる社会を実現する」と述べました。


教育


奨学金拡充進めよ


いじめ対策に全力

親の経済格差が子どもに受け継がれる「貧困の連鎖」を断ち切るには、家庭の経済状況に関係なく、全ての子どもに教育の機会が与えられている社会を築いていかなければなりません。

井上幹事長は、公明党の推進で17年度予算案に無利子奨学金の拡充や、返済不要の「給付型奨学金」の一部先行実施などが盛り込まれたと力説【表参照】。その上で「子どもたちの可能性を開く教育支援をさらに拡充していくべきだ」と求めました。安倍首相は「今後も必要な財源を確保しつつ、教育費負担の軽減に取り組む」と応じました。

一方、山口代表は、文部科学省が昨年発表した15年度の調査結果で、いじめの認知件数が過去最多の22万4540件だったことに触れ、「これまで以上に未然防止や相談体制の充実に全力を挙げるべきだ」と強調。また、不登校の小中学生が約12万6000人に上る実態を踏まえ、学校に行けない子どもたちの学びの場を確保するよう訴えました。


働き方改革


長時間労働を是正


非正規への支援も

長時間労働の是正に向けて井上幹事長は、時間外労働の罰則付きの上限を定める法改正を急ぐよう提唱。安倍首相は「早期に法案を提出する」と答弁しました。

さらに井上幹事長は「就職氷河期世代(35~44歳)などに多いとされる不本意な非正規労働者の正社員化を促す必要がある」として、キャリアアップ支援の推進を要請。正社員と非正規労働者の不合理な待遇差を解消する同一労働同一賃金の実現も主張しました。

山口代表は、多様な働き方を推進し、労働生産性を向上させる観点から、テレワークや副業・兼業のさらなる普及を訴えました。安倍首相は「多様な政策手段について検討を進める」と答えました。

また山口代表は「働く女性の6割近くが非正規であり、男性との賃金格差も課題になっている」と指摘。併せて、育児などで離職した女性が復職・再就職しやすいよう、学び直しを促す助成制度の拡充や短時間勤務の導入などを求めました。


外交


SDGs(持続可能な開発目標)の理念を教育に


「核兵器のない世界」主導すべき

山口代表は日米関係について、トランプ新政権との信頼関係の構築へ早期の首脳会談開催に期待を表明。貿易立国の日本として「経済連携協定の締結は極めて重要」との認識を示し、欧州連合(EU)などとの交渉促進を求めました。

「核兵器のない世界」の実現に向け、唯一の戦争被爆国として主導的な役割を果たし、国連決議を受けて開始される核兵器禁止条約交渉に「より良い結果となるよう尽力すべきだ」と主張しました。

一方、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の取り組みでは、日本の知見や経験を生かした「防災の主流化」の重要性を指摘。SDGsの「誰一人取り残さない」との理念は「未来を担う子どもたちの心に刻んでほしい重要な考え方」として、教育に取り入れるよう求めました。これに安倍首相も同意し、「2020年度から開始される新しい学習指導要領に基づく教育課程や教材の改善、充実を推進していく」と答えました。

日中関係で井上幹事長は、国交正常化45周年の節目を好機ととらえ、関係発展に尽力すると強調。日ロ関係では、昨年の首脳会談を踏まえ、北方領土の元島民の高齢化に配慮した希望につながる取り組みの実施を訴え、安倍首相は「平和条約締結に向け着実に前進していく」と答えました。


復興、防災・減災


ハードとソフト総動員


「ふくしまブランド」で風評払しょく

今年の3月11日で東日本大震災から6年。井上幹事長は、被災者が「人間の復興」を成し遂げるまで寄り添い続け、復興加速の決意をあらためて表明し、山口代表は福島の復興に向け、農林水産業の安全・安心な「ふくしまブランド」の普及など、風評を払しょくするさらなる取り組みが必要と力説しました。

また井上幹事長は、熊本地震など相次いで発生した自然災害の復興へ国の力強い支援を要請。今後も首都直下地震や気候変動による豪雨被害などが懸念され、「国民生活を守る防災・減災対策の強化は喫緊の課題」と強調したのに対し、石井啓一国土交通相(公明党)は、ハード・ソフト対策の総動員で「災害から国民の命と暮らしを守るために総力を挙げる」と答えました。

山口代表は、近年の自然災害で浮き彫りとなった課題への対策や、社会インフラの老朽化対策が急務とし、「メンテナンス技術」の産業育成と活性化を求めました。


識者の反響


価値ある「給付型」充実に期待
日本大学教授 岩渕美克氏

大学教育の現場では、意欲があるのに経済的な理由で退学を余儀なくされる学生が少なくありません。その中で、公明党の代表質問には"子どもたちの学びを確保しよう"との強い思いが込められていました。

「教育の原点は、子どもの幸福にある」との山口代表の力強い訴えは、教育支援を進める大きな力です。

公明党が進めてきた給付型奨学金の創設は、教育の無償化に向けたステップの一つとして大きな価値があります。教育への投資は未来への投資。子どもたちの人生や可能性を大きく開きます。井上幹事長が主張した「給付型を大きく育てる」「無利子奨学金の拡充」といった提案の早期実現を期待しています。

大きく未来を見据えた政策を議論できるのは政治が安定し、経済が上向いているからこそ。公明党には、生活者目線で成長の果実を適切に分配し、希望がゆきわたる社会をめざして、まい進してほしいです。

今後も、成長の過程で見落とされがちな弱者の視点に立った政策の推進を期待しています。


法改正で時間外労働に上限を
法政大学経営大学院教授 藤村博之氏


井上幹事長は、時間外労働の上限を罰則付きで定める法改正を政府に提唱しました。長時間労働を是正するための的を射た提案であるといえます。

日本の労働基準法は、従業員を週40時間を超えて働かせてはならないとしています。しかし、労働基準法第36条に基づき、労使が協定(36<サブロク>協定)を結んで労働基準監督署に届け出れば、超過勤務が可能になります。

時間外労働は、1998年の労働省告示によって、年間360時間までとされていますが、労使が特別条項付きの36協定を結べば、事実上、時間外労働が上限なく認められてしまうため、長時間労働が常態化し、労働者の健康被害が生じています。長時間労働を是正するには、時間外労働の上限を法律で明確に規定することが重要です。

また、意欲的に仕事をしている場合と嫌々仕事をしている場合とでは、同じ時間働いても心身の健康に与える影響は異なります。労働時間の制限とともに、仕事のやりがいを高めるという視点も大切です。

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